イタリア国鉄ETR450電車

イタリア国鉄ETR450電車：ペンドリーノの先駆け

イタリア国鉄ETR450電車、通称ペンドリーノは、1980年代にイタリアで開発・導入された車体傾斜式電車です。この車両は、フィアットの鉄道部門（後にアルストムに統合）が1970年代から開発を進めてきたもので、イタリアの鉄道史において重要な役割を果たしました。

ペンドリーノの誕生

ETR450は、高速鉄道網の整備が始まった時期に、曲線区間での速度向上を目指して開発されました。その最大の特徴は、車体傾斜システムです。油圧シリンダーを用いて車体を最大8°傾斜させることで、曲線区間での遠心力を軽減し、乗り心地を損なうことなく高速走行を可能にしました。この技術は、高速新線だけでなく、従来の路線でも速度向上に大きく貢献しました。

1988年5月には、ローマ・ミラノ間の高速新線「ディレッティシマ」で営業運転を開始し、当時の所要時間を3時間58分に短縮しました。これにより、イタリア国内の主要都市間の移動時間が大幅に短縮され、人々の生活やビジネスに大きな変化をもたらしました。編成は、9両（8M+1T）または11両（10M+1T）で構成されていました。

技術的な特徴

ETR450には、強制車体傾斜式が採用されており、これは、曲線区間に差し掛かると、油圧シリンダーによって自動的に車体が傾斜するというものです。このシステムによって、高速走行時でも乗客は快適な乗り心地を維持することができました。最高速度は280km/hですが、実際の営業運転では250km/hで運行されました。

運用と引退

長年にわたりイタリアの主要路線で活躍したETR450ですが、技術の進歩とともに、後継車両が登場し、次第にその役割を終えることになります。2007年1月には、より高速で走行できるETR460、ETR480、そして300km/hで走行可能なETR500に置き換えられ、ディレッティシマからの運用を外れました。

その後は、ローマ-バーリ、ローマ-アンコーナ-リミニ、ジェノヴァ-フィレンツェなどの路線で活躍しましたが、2015年1月5日をもって、動態保存用の第3編成を除き、営業運転から引退しました。しかし、ETR450が培った技術と経験は、その後のペンドリーノシリーズや、他の高速鉄道車両の開発に大きな影響を与えました。

まとめ

ETR450は、車体傾斜式車両の先駆けとして、イタリアの高速鉄道史に名を残す存在です。その技術的な革新性と、人々の移動を快適にした功績は、今日でも高く評価されています。ペンドリーノという愛称とともに、その歴史は語り継がれていくでしょう。

関連項目

車体傾斜式車両
トレニタリア
TAV

参考文献

鉄道ファン 2007年12月号 世界の高速鉄道 イタリアETR500とペンドリーノ 佐藤芳彦 132頁～137頁

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