イタリア植民地帝国

イタリア植民地帝国の興亡

イタリア植民地帝国は、19世紀後半から20世紀半ばにかけて存在した、イタリア王国（後のイタリア共和国）による植民地、保護領、租借地、信託統治領の総称です。この帝国は、イタリアの国威発揚と領土拡大の野望を体現するものであり、その歴史は、ヨーロッパ列強による植民地獲得競争の縮図とも言えます。

帝国の黎明期

1869年のスエズ運河開通を機に、イタリアは紅海沿岸のアッサブ湾を購入し、初の海外領土としました。その後、1880年代の「アフリカ分割」の波に乗り、エリトリア、ソマリランド、リビアを次々と獲得しました。さらに、ドデカネス諸島や天津租界も領有し、その版図を広げました。

しかし、イタリアは植民地獲得競争では後発組であり、他のヨーロッパ列強に比べて国力が劣っていたため、その拡大は他国の黙認に依存する側面がありました。特に、1896年のアドワの戦いでのエチオピアへの敗北は、イタリアの植民地政策に大きな打撃を与えました。

ファシズム体制下の拡大

1922年にムッソリーニが政権を握ると、ファシスト党は帝国の拡大を国家的目標としました。特に、地中海を「我らの海（Mare Nostrum）」とし、ローマ帝国の再興を目指すという野望が掲げられました。1935年の第二次エチオピア戦争での勝利により、エチオピアを併合し、イタリア領東アフリカを成立させました。また、1939年にはアルバニアを侵攻し、その支配下に置きました。

ムッソリーニは、イタリアの国家主権を確保するためには、世界の海洋と航路への自由なアクセスが必要であると考え、大西洋やインド洋への進出も目指しました。しかし、これらの拡張政策は、国際的な緊張を高め、第二次世界大戦への道を開くこととなりました。

第二次世界大戦と帝国の終焉

イタリアは、第二次世界大戦に枢軸国として参戦し、地中海周辺の領土拡大を試みましたが、連合軍の反撃により、その勢力は急速に衰退しました。1943年までに、アフリカの植民地は連合軍に奪還され、ムッソリーニは失脚、逮捕されました。その後、イタリアは連合国と休戦協定を結び、枢軸国から離脱しました。

戦後の1947年、イタリアは講和条約により、すべての植民地に対する主権を放棄しました。しかし、1950年には、国際連合の監視下でイタリア信託統治領ソマリアの管理を許可され、1960年にその統治領が独立を果たすことで、イタリアの植民地帝国としての歴史に幕を閉じました。

植民地帝国の遺産

イタリア植民地帝国は、その短い歴史の中で、多くの負の遺産を残しました。エチオピアでの虐殺や、リビアでの過酷な弾圧、そして、植民地主義がもたらした社会・経済的な混乱は、その例として挙げられます。

一方で、インフラ整備や文化交流などの側面も存在し、その影響は、現代の国際関係にも残っています。イタリア植民地帝国の歴史は、植民地主義の光と影を映し出す鏡として、今後も研究され続けるでしょう。

各植民地・統治地域

アフリカ
イタリア領エリトリア
イタリア領ソマリランド
イタリア領リビア
イタリア領東アフリカ（エチオピア、エリトリア、ソマリランド）
ヨーロッパ
イタリア領エーゲ海諸島（ドデカネス諸島）
イタリア保護領アルバニア
アジア
イタリアの天津租界

参考文献

Atlas of Italian colonies, written by Baratta Mario and Visintin Luigi in 1928
Simona Berhe: Colonies (Italy), in: 1914-1918-online. International Encyclopedia of the First World War.

関連項目

ファシズム体制下のイタリア帝国主義
ファシスト・イタリア
イタリアのファシズム
ドイツ植民地帝国
* 日本植民地帝国

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