イタリア領エリトリア

イタリア領エリトリアの歴史

イタリア領エリトリアは、現在のエリトリアに存在したイタリア王国の植民地です。その歴史は、1869年にイタリアの海運会社がアッサブを購入したことから始まりました。その後、イタリアは徐々に領土を拡大し、1890年に正式にエリトリア植民地を設立しました。

植民地設立までの経緯

イタリアの紅海進出は、ジュゼッペ・サペトという人物の活動が大きく影響しています。彼は、スエズ運河の開通を見据え、イタリアの蒸気船のための給油所と寄港地を紅海に設けることを構想しました。サペトは政府を説得し、1869年にアッサブ湾の領有権をダナキル族の首長から獲得しました。この領有権は、ラファエレ・ルバッティーノの会社に譲渡され、イタリアの拠点となりました。1882年には、イタリア政府がこの地を正式に領有しました。

イタリアの領土拡大

紅海の西岸は、当時エジプトの支配下にありましたが、エジプト・エチオピア戦争での敗北とスーダンでの反乱により混乱していました。イギリスは、フランスの進出を警戒し、イタリアにマッサワの占領を促しました。1885年、イタリアはマッサワを占領し、要塞化して総督府を設置しました。1889年には、エリトリア沿岸の高地を占領し、首都をアスマラに定め、新植民地エリトリアを設立しました。

ウッチャレ条約により、イタリアはエチオピア南部を支配していたメネリク2世から、一部地域の占領を認められました。しかし、この条約はイタリア語版とアムハラ語版で内容が異なり、エチオピアは事実上イタリアの保護領とされました。メネリク2世はこれに反発し、イタリアとの間でアドワ戦争が勃発しました。イタリアはこの戦争で敗北し、エチオピア併合の望みは一時的に断たれました。

植民地時代の開発

イタリアは、エリトリアの開発に力を注ぎました。1888年にはエリトリア鉄道が一部開通し、1911年にはアスマラまで延伸されました。また、アスマラとマッサワの間には、当時世界最長の索道が建設されました。イタリアによる統治は、医療と農業の分野にも改善をもたらしました。都市部では近代的な衛生設備が整えられ、病院サービスも提供されるようになりました。また、エリトリア人は警察や公共事業などの公務にも従事しました。

エリトリアは、イタリアの植民地の中で最も発展した地域であり、「コロニア・プリモジェニタ（最初に生まれた植民地）」と呼ばれました。20世紀初頭には、イタリア政府の援助により、多くのアスマラやマッサワ周辺にイタリア人が定住しました。第二次世界大戦が始まる頃には、イタリア系エリトリア人のコミュニティは10万人近くにまで拡大しました。

ファシスト時代の変化

1922年にベニート・ムッソリーニが政権を握ると、エリトリアの植民地政府は大きく変化しました。1936年には、イタリア領エリトリア、イタリア領ソマリランド、エチオピアが合併し、イタリア領東アフリカが成立しました。この時期、エリトリアは工業の中心地として発展し、アスマラの人口は急増しました。イタリア人入植者の数も増え、1938年にはアスマラは実質的にイタリアの都市となりました。1930年代にはコーヒーの輸出が好調で、イタリア人農場主が利益を上げました。

エリトリアは、エチオピア侵攻のための拠点となり、第二次世界大戦中にはスーダンへの攻撃も行われました。エリトリアのアスカリは、イタリア軍の主力として活躍しました。アスマラは、イタリア風の建築物が多く、「ピッコラ・ローマ（小さなローマ）」と呼ばれるほどでした。

イギリスによる軍政と植民地の終焉

1941年1月、イギリス軍がエリトリアを占領すると、インフラや工業地帯は大きな損害を受けました。戦後、エリトリアはイギリス軍の統治下に置かれました。イタリアの敗戦後、エリトリアに住んでいたイタリア人の多くが国外へ移住し、アスマラの人口は激減しました。イギリスは、当初エリトリアのイタリア統治を維持しようとしましたが、エリトリアの独立運動が激化しました。

エリトリアの独立運動は、1940年代後半にはイギリスから、1952年以降はエリトリアを併合したエチオピアからの独立を目指す動きとなりました。ヴィンチェンツォ・ディ・メグリオのようなイタリア系エリトリア人も、エリトリアの独立を推進しました。1947年には、「シャラ・イタリア党」が設立され、エリトリアの独立を支持しました。しかし、1947年の平和条約で、イタリアは植民地支配の終焉を受け入れました。エチオピア政府がエリトリアを支配するようになると、イタリア人コミュニティは徐々に消滅していきました。一部のイタリア系エリトリア人は、エチオピア政府に歓迎され、社会の一員として活躍しました。

参考文献

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外部リンク

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