イヌタデ

イヌタデ（犬蓼）

イヌタデ（学名: Persicaria longiseta）は、タデ科イヌタデ属に分類される一年草です。日本を含むアジアの温帯から熱帯にかけて広く分布しており、道端や野原、畑など、身近な場所でよく見かけることができます。その名前は、同じタデ科のヤナギタデと対比して、葉に辛味がなく役に立たないという意味で「イヌ」と付けられました。また、赤い小さな花や果実が赤飯のように見えることから、「アカノマンマ」という別名でも親しまれています。

形態・生態

イヌタデは、茎の基部が横に這いながら、斜め上に伸びて、草むらのような小さな集団を作ります。茎の高さは20cmから40cm程度で、柔らかく、通常は紅紫色を帯びています。葉は互い違いに生え、披針形（ひしんけい）で、両端が尖っています。葉の縁や裏側の葉脈には毛が生えており、葉の付け根には筒状の托葉鞘があります。托葉鞘の縁には緑色の毛が生えているのが特徴で、同じタデ科のオオイヌタデとはこの点で区別できます。

春から秋にかけて、茎の先端から花穂を伸ばし、紅紫色の小さな花を密に咲かせます。まれに白い花も見られます。花びらはなく、萼片が4つまたは5つに深く裂けており、それぞれが倒卵形をしています。雄しべは8本、花柱は3本です。花が終わると、赤い果実が目立つようになります。果実自体は暗褐色で小さな三角形の痩果ですが、赤い萼に覆われているため、全体として赤く見えます。

人間との関わり

イヌタデは雑草として扱われることが多いですが、その美しい姿は、画材として利用されることもあります。特に、赤飯を連想させる赤い花穂は「アカノマンマ」として親しまれ、俳句では秋の季語として詠まれています。

参考文献

内藤俊彦『秋の花』北隆館〈フィールド検索図鑑〉、1995年9月1日、203頁。ISBN 4-8326-0371-X。
平野隆久写真『野に咲く花 : 写真検索』林弥栄監修、門田裕一改訂版監修（増補改訂新版）、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、262頁。ISBN 978-4-635-07019-5。
山田孝彦、山津京子『万葉歌とめぐる野歩き植物ガイド』（初版）太郎次郎社エディタス、2013年8月15日、95頁。ISBN 978-4-8118-0762-1。

関連項目

草の一覧
ヤナギタデ
イヌ

外部リンク

Persicaria longiseta - National Center for Biotechnology Information (NCBI)
Persicaria longiseta - Encyclopedia of Life
イヌタデ - 植物雑学事典
イヌタデ（犬蓼）- Botanical Garden

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