イフワーン

イフワーン：サウジアラビア建国と近代化への抵抗

「イフワーン」とはアラビア語で「同胞」を意味し、サウジアラビアにおけるワッハーブ派イスラム教原理主義者の集団を指します。その歴史は、サウジアラビア建国と深く関わっています。

サウード家との協働と建国への貢献

強力な民兵組織でもあったイフワーンは、サウード家と連携し、サウジアラビア統一において重要な役割を果たしました。その結果、ワッハーブ派原理主義がサウジアラビアの国教となりました。この協力関係は、サウジアラビア建国の礎を築いたと言えるでしょう。しかし、この協力関係は長くは続きませんでした。

イフワーンの反乱：近代化への抵抗

イフワーンは極めて原理主義的な集団であり、電話やラジオ、自動車といった近代文明を拒絶しました。彼らは、サウード家が推進する近代化政策に反発し、1927年から1930年にかけて「イフワーン運動」と呼ばれる反乱を起こしました。この運動では、電話線を切断したり、自動車を破壊するといった破壊活動が展開されました。

イフワーンの反乱は、サウード王家による武力鎮圧によって終結しました。生き残ったイフワーンは、地方のオアシス周辺で、伝統的な生活に戻っていきました。指導者であるスルターン・ビン・バジャード・アル・オタイビーは、1931年に獄死しました。

イフワーン運動の国際的影響

イフワーン運動は、サウジアラビア国内にとどまらず、国際的にも影響を与えました。特に、当時の中国のムスリム社会に影響を与え、イフワーン派が形成されました。しかし、この中国のイフワーン派は、サウジアラビアのイフワーンとは異なり、ワッハーブ派原理主義を否定し、サラフィーヤ派と対立する立場をとりました。

国家警備隊の編成と「ホワイト・アーミー」

サウード・ビン・アブドゥルアズィーズ国王は、地方に散らばっていたイフワーンの中から王家に忠誠を誓う者を選抜し、サウジアラビア国家警備隊を編成しました。現代のイフワーンは、伝統的な白いローブを着用しており、アメリカ軍からは「ホワイト・アーミー」と呼ばれています。これは、イフワーンがサウード王家によって組織化され、国家権力の一部として再編されたことを示しています。

まとめ：イフワーンの複雑な歴史

イフワーンの歴史は、サウジアラビア建国に貢献しながらも、近代化への抵抗という複雑な側面を示しています。サウード家との協力関係、イフワーン運動、そして国家警備隊への編入という歴史的変遷は、サウジアラビアの政治と社会を理解する上で重要な要素です。彼らの歴史は、宗教、政治、近代化という複雑な要素が絡み合った、サウジアラビアという国の形成過程を如実に示しています。イフワーンの行いは、サウジアラビアの現代社会にも影響を与え続けていると言えるでしょう。

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