イラク王国

イラク・ハシミテ王国について

イラク・ハシミテ王国（المملكة العراقية الهاشمية）は、1932年から1958年にかけて存在した国家であり、現在のイラク地域を中心に展開されました。ハーシム家が王統を成し、隣国のヨルダン・ハシミテ王国とともにその名を冠した王国でした。

歴史的背景

イラク地域は歴史的にアッバース朝時代に建設されたバグダードを中心に繁栄していました。しかし、1258年のモンゴル帝国による支配、続くオスマン帝国の到来により、次第に周辺の辺境化が進みました。特にサファヴィー朝との間で争奪戦が繰り広げられ、オスマン帝国は最終的にバグダードを確保し、イラク全域を領有するに至りました。

アラブ民族主義の高まり

19世紀末になると、オスマン帝国とイランの権力が衰退し、西洋列強の侵略が進む中でアラブ民族主義が芽生え始めます。第一次世界大戦中、イギリスはアラブ地域の独立を約束し、ハーシム家に率いられたアラブ反乱が1916年に発動しました。この動きは、アラブ地域の独立に向けた重要な一歩となりました。

イラク王国の設立

1918年の戦後、パリ講和会議において民族自決の原則が発表され、イラク地域にも独立国の成立が期待されましたが、サイクス・ピコ協定に基づきイギリスとフランスの委任統治領として分割されました。しかし、イギリスはハーシム家を王として迎え入れ、1932年10月にイラク王国の独立が承認され、ファイサル1世が王となりました。この時期、北部での石油発見は、イラクの経済基盤を支える重要な要素となりました。

内政の混乱と外的脅威

ファイサル1世の死後、アラブ民族主義が高まる中、アイラーフ王政の下でイラクは中東での英米の同盟国として振舞います。しかし、1948年に勃発した第一次中東戦争での敗北は、イラク国内の不穏な空気を生み出し、政治的な動揺を引き起こしました。特に自由将校団によるクーデターの動きが加速し、1952年には反米英の勢力が台頭してきます。

アングロ・イラク戦争とその余波

第二次世界大戦のさなか、ナチス・ドイツとの接近を試みたラシード・アリー・アル＝ガイラーニー政権が樹立され、イギリスとの戦争が勃発しました。アングロ・イラク戦争の結果、イギリス軍がバグダードを占領し、再度ハーシム家の王制が復活しましたが、国内の反英感情は根強く残りました。

王国の滅亡

戦後、イラク王国はアラブ連盟へ参加しつつも、アラブ諸国との連携が上手くいかず、経済的困難が続いた上、1958年にはクーデターが発生しました。この「7月14日革命」により、ハーシム家は滅亡し、イラクは共和国へと移行しました。

今後の展望

その後のイラクは、カースィム政権のもとソ連と接近し、次第にバアス党による独裁政権のもとでの政治が進行しました。現代においても、イラク・ハーシム家の後継者が存在し、国民からの支持を得るために様々な活動が展開されています。イラクの歴史は、これまでの政権の興亡を経て、現在の形に至るまでの複雑に交差する経路をたどっています。

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