イラク移行政府

イラク移行政府

イラク移行政府は、2005年4月28日に成立したイラクの政府です。イラク戦争後の暫定政権から権限を引き継ぎ、同年末までに憲法を制定し、憲法に基づいた選挙を実施することを目標としていました。2006年5月20日に正式な政府が発足するまで、イラク全土を統治しました。

発足の経緯

2005年1月30日に行われたイラク初の選挙で選出された議員たちが、2月半ばから政府の樹立に取り組みました。しかし、シーア派、スンナ派、クルド人など、各勢力の意見をまとめるのに時間がかかり、政府の発足はアメリカ合衆国が当初予定していた時期よりも遅れました。

閣僚（発足時）

大統領：ジャラル・タラバニ（クルド人）
副大統領：アーディル・アブドゥルマフディー（シーア派）、ガーズィー・ヤーワル（スンナ派）
首相：イブラーヒーム・アル＝ジャアファリー（シーア派）
副首相：ロウシュ・シャーウィース（クルド人）、アフマド・チャラビー（シーア派）
国防大臣：ジャアファリー首相が兼任
石油大臣：ジャアファリー首相が兼任
外務大臣：ホシャール・ジバリ（クルド人）
内務大臣：バヤン・ジャブル（シーア派）
財務大臣：アリー・アッラウィー（シーア派）

大統領と副大統領は象徴的な役割を担い、実際の政治は首相以下が行いました。

歴史

2005年

4月28日: 移行政府が発足し、新憲法草案の作成を開始しました。
8月: 新憲法草案がクルド人やスンナ派議員の反対により一度否決されました。しかし、1週間後の再投票で可決・承認されましたが、スンニ派の反対により全会一致とはなりませんでした。
10月15日: 新憲法の是非を問う国民投票が実施されました。
10月25日: 国民投票の結果、賛成多数で新憲法が承認されました（反対派のほとんどはスンニ派国民と考えられています）。
12月15日: 新憲法に基づいて2回目の議会選挙が実施されました。人口の多いシーア派が多数を占めましたが、スンナ派と共に世俗革新政党よりも宗教保守政党が多くの議席を獲得しました。

当初の予定では、12月末までに新政府を樹立し、国際連合の多国籍軍が撤退を開始する予定でしたが、これは実現しませんでした。

2006年

2月: 選出された議員による国民議会から正式な政府を選出する予定でしたが、議会選挙でシーア派保守勢力が多数の議席を占めたため、スンナ派が反発し、選出が難航しました。下旬には両宗派の衝突も発生しました。
3月16日: 12月の選挙に基づく国民議会が召集されましたが、40分ほどで休会となりました。その後、正式政府に関する議論が紛糾し、シーア派武装勢力を率いるサドル師と親しいジャアファリー首相の続投を巡って内外から反発が起こりました。アメリカもジャアファリーの続投を望まない姿勢を示しました。
3月19日: アッラーウィー元首相が内戦の可能性について発言しました。4月にはエジプト大統領やサウジ外相も同様の発言を行い、移行政府はこれに反発しました。
4月22日: 統一イラク同盟（UIA）が首相にジャワド・マリキを擁立しました。スンナ派とクルド人もこれを容認し、連邦議会が再開されました。大統領評議会（大統領・副大統領で構成）がマリキに組閣を命じ、同日中に以下の役職が選出されました。
連邦議会議長：マフムード・マシャダニ（スンナ派）
大統領：ジャラル・タラバニ（クルド人、継続）
副大統領：アディル・アブドルマフディ（シーア派）、ターリク・ハーシミー（スンナ派）
5月20日: 正式政府が発足しました。各宗派の議席数に応じて閣僚を選出することで合意しましたが、内務大臣や国防大臣については合意に至らず、マーリキー首相が暫定的に兼任することになりました。

関連項目

イラク戦争
イラク戦争の年表
連合国暫定当局
イラク暫定政権
サッダーム・フセイン
* バアス党

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