イラストレイテッド・ソング

イラストレイテッド・ソング：20世紀初頭のアメリカを彩ったパフォーマンスアート

イラストレイテッド・ソングは、20世紀初頭のアメリカ合衆国で人気を博した、独特なパフォーマンスアートの一形態です。これは、生演奏（通常は歌手とピアニスト）と、録音された伴奏（現代で言うカラオケ）を組み合わせ、さらにスライド映写された静止画を付随させるというものでした。初期にはヴォードヴィルの舞台で、その後はニッケルオデオンといった劇場で観客を楽しませました。

視覚と聴覚の融合

各曲に使用された静止画は12枚から16枚で、歌詞の内容を視覚的に表現（illustrated）するために用意されました。これらの静止画は手彩色が施されることもあり、その芸術性が観客を魅了しました。映写には、2台の幻灯機を組み合わせた立体幻灯機（ステレオプティコン）が使用され、より立体感のある映像表現を実現しました。

上映の場と役割

イラストレイテッド・ソングは、サイレント映画の上映前や、映画フィルムの入れ替え時間を利用して上映されることが多かったですが、場所によってはメインの演目として上演されることもありました。全米で少なくとも1万もの小劇場で上映され、当時としては非常にポピュラーな娯楽であったことがわかります。

楽譜販売促進の重要手段

イラストレイテッド・ソングは、楽譜の販売促進において重要な役割を果たしました。楽曲の内容を視覚的に表現することで、観客の興味を引きつけ、楽譜の購買意欲を高める効果がありました。また、観客が飛び入りで参加することも歓迎され、エンターテイメントとしての側面も強く持っていました。

スターの輩出

イラストレイテッド・ソングは、多くの映画スターを輩出した場でもありました。ロスコー・アーバックル、ファニー・ブライス、エディ・カンター、ジョージ・ジェッセル、アリス・ジョイス、フローレンス・ローレンス、ノーマ・タルマッジなど、後に映画界で活躍する人々が、イラストレイテッド・ソングで歌詞を説明するモデルとしてキャリアをスタートさせました。

初期の成功と影響

イラストレイテッド・ソングの最初の成功例として、1894年の『The Little Lost Child』が挙げられます。この曲は全米で200万部を超える楽譜を売り上げ、イラストレイテッド・ソングという形式が非常に効果的なプロモーション手段であることを証明しました。そのため、イラストレイテッド・ソングは、しばしば初期のミュージックビデオと呼ばれることがあります。

まとめ

イラストレイテッド・ソングは、20世紀初頭のアメリカにおいて、視覚と聴覚を融合させたユニークなエンターテイメントとして、人々に愛されました。また、楽譜販売促進の重要な手段であり、後の映画スターを輩出する場ともなりました。その形式は、現代のミュージックビデオのルーツとも言えるでしょう。


出典

[外部リンク]

Music Video 1900 style on PBS Kids Go!
"Take Me Out to the Ballgame" on YouTube
* "'Goodbye, Girlie, and Remember Me' An Illustrated Song" [with video], Going to the Show.

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