イラン建国二千五百年祭典

イラン建国2500年祭典

イラン建国2500年祭典（イランけんこくにせんごひゃくねんさいてん）は、古代アケメネス朝ペルシア帝国の創始者であるキュロス2世による君主制の成立から2500周年を祝うために、1971年の10月12日から16日にかけて開催された一連の行事を指します。このイベントは、当時のシャー（皇帝）であったモハンマド・レザー・パフラヴィーの治世の誇示を目的に企画されました。

祭典の計画

この祭典の実現には、10年以上の年月を要しました。公式シンボルとして採用されたのは、キュロスの円筒碑文で、主な開催地には古代都市の遺跡であるペルセポリスが選ばれました。しかし、当時のシーラーズ周辺のインフラは整備が不十分で、空港やペルセポリスへのアクセス道路の改善が求められました。そのため、参加する報道関係者やスタッフの宿泊施設はシーラーズ市内に設けられましたが、主要なイベントはペルセポリス近隣の特設テント村で行われました。

ペルセポリス周辺には、特に危険な動物が駆除され、イベントの準備が着々と進めらました。さらには、キュロス2世の墓があるパサルガダエや、テヘランでも関連行事が実施されるなど、広範にわたる準備が行われました。

テント・シティの設計

「テント・シティ」と呼ばれるこの特設施設は、160エーカー（約0.65 km²）の広さを持ち、フランスのインテリアデザイン会社の手によるものでした。中央の噴水を囲むように星型に配置された50張のテントは、実際には豪華なプレハブ仕様で、ペルシアの伝統的な布が張られました。周囲には数多くの樹木が植えられ、まるで緑あふれる都市のように見えました。

テントには、各国からの出席者が自国との連絡を取れる電話やテレックスが整備され、祭典行事は衛星中継を通じて世界中に放映されました。宴会場は68メートル×24メートルの広さを持ち、料理はフランスの有名レストラン「マキシム・ド・パリ」が担当しました。シャーの厳戒態勢の中、250台の赤いメルセデス・ベンツのリムジンで賓客が搬送されました。

祭典のイベント

祭典は、初日にシャーと皇后がキュロスの霊廟に参拝することから始まりました。その後、彼らは到着した各国の賓客を歓迎し、特別な晩餐会が行われました。この晩餐は、近代以降の歴史において最も長時間続いた公式行事の一つとして知られ、約600名の参加者が贅沢な料理を楽しみました。

さらには、音楽と光のショーが行われ、イラン陸軍の兵士たちによる行進も催されました。この行進では、歴代帝国にちなんだ衣装を身にまとった兵士が、2500年間のイランの歴史を振り返るものでした。最終日には、イランの首都テヘランに新たに建設されたシャーヤード・タワーの除幕式が行われました。このタワーには歴史的な展示が行われ、キュロスの円筒碑文が関連付けられました。

治安問題と批判

この一大イベントの実施にあたっては、治安の確保が大きな課題となりました。ペルセポリスの地理的特性から、厳重な警備体制が整えられ、問題が発生するのを未然に防ぐ対策が取られました。一方で、政府に対する批判の声も上がり、ホメイニーはこの宴を「悪魔の祭典」と表現しました。また、祭典の費用に関しても、不透明な数字が報道され、議論を引き起こしました。

招待客とその後

この祭典には、各国の指導者や王族が招待され、冷戦時代における国際的な交流の場ともなりました。イギリスのエリザベス2世は治安の懸念から出席を見送ったものの、名代が参加し、さまざまな国の重要人物が集いました。その後、この行事は1977年まで毎年続けられることとなりますが、イラン革命により多くの変化が訪れました。

ペルセポリスは現在もイランの重要な観光地であり、その歴史的な遺産を保全するための取り組みが求められています。祭典で使用されたテント・シティは、イラン革命後に破壊されましたが、時折、かつての栄光をしのぶ場所として訪れる人々がいます。

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