イリ条約
イリ条約について
イリ条約（伊犁条約）は、1881年2月24日にロシア帝国と清朝の間で締結された重要な国際条約です。この条約は、サンクトペテルブルクで結ばれ、主に中央アジアにおける国境線の確定や領土に関する合意を扱いました。
条約の背景
17世紀末から続いていた東トルキスタンの覇権争いは、清国が1759年にジュンガルの旧領を接収したことによって新たな局面を迎えました。以降、清朝はイリ川北岸にイリ将軍府を設け、強制移住政策などを通じて地域の統治を強化しました。しかし、この支配は反発を招き、1862年には回族を中心とした大規模な反乱が発生しました。
1865年、コーカンド・ハン国の軍人ヤクブ・ベクが反乱の余波を利用して清朝の勢力を圧迫し、1867年には天山南路を掌握しました。この時期、イギリスとロシアによる「グレート・ゲーム」と呼ばれる中央アジアの影響力争いも進行し、ヤクブ・ベク政権は両国の関心を集めました。
ロシア帝国は1868年にイリ地方を占領し、その保護を名目に清国との間で交渉を開始しました。1876年から77年にかけて清朝軍は再びウルムチやカシュガルを奪還し、地域を再征服しました。
リヴァディア条約
清国とロシアの関係は、その後も緊張し続けました。1878年にはリヴァディア条約が締結され、イリ地方の清国への返還を求める交渉が進められましたが、これはロシアの利益を優先した内容となりました。反対意見も多く、左宗棠はロシアに対して開戦を主張しましたが、最終的には清国側の妥協を余儀なくされました。
イリ条約の締結
1880年、再交渉の結果、イリ条約が締結されました。この条約では、清朝がザイサン湖周辺をロシアに割譲し、賠償金900万ルーブルを支払うことが合意されました。さらに、イリの東側地域が清に返還されましたが、ホルゴス河以西のイリ西部はロシアに渡ることになりました。
条約の意義と評価
佐口透は、イリ条約が不平等条約でありながらも、当時不明確だった中央アジアの国境線を確定した事例であると評価しています。この時に定められた国境線は現在に至るまで影響を与え続けています。
その後、清朝は新疆省の設置を進め、1884年には正式に省として成立させました。これにより、東トルキスタンは漢民族の管理下に置かれることになり、自治権は失われました。イリ条約は、単に領土の変更にとどまらず、中国の中央アジアにおける治世のあり方にも大きな変化をもたらしたのです。
参考文献
関連項目
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