イワザクラ

イワザクラ（岩桜）

イワザクラ（学名：Primula tosaensis）は、サクラソウ科サクラソウ属に分類される多年草です。その美しい紅紫色の花は、山野に春の訪れを告げる存在として、人々に愛されてきました。

特徴

イワザクラは、直径3～7cmほどの円形の葉を持ち、その縁には不揃いの鋸歯があります。花期は4～5月で、高さ5～10cmほどの花茎を伸ばし、その先に1～5個の花を散形につけます。花弁は5枚に分かれており、紅紫色で、中央の花喉部は黄色をしています。花の直径は2.5～3cmほどです。別名として「ドサザクラ」とも呼ばれています。

分布

イワザクラは、日本の固有種であり、主に岐阜県、紀伊半島、四国、九州の丘陵帯上部から山地帯の樹林に分布しています。特に、石灰岩の岩の隙間や、沢沿いの岩壁の隙間などに自生することが多く見られます。かつては岐阜県旧美山町（現山県市）の町花でしたが、盗掘による減少が深刻化し、2003年には「山県市イワザクラ保護条例」が制定されるに至りました。主な自生地としては、山県市の舟伏山、鈴鹿山脈の鎌ヶ岳、宮崎県の鰐塚山などが挙げられます。

近縁種

イワザクラの近縁種としては、以下のものが知られています。

ヒダカイワザクラ (Primula hidakana)：北海道の日高地方に分布する種で、環境省レッドリストの絶滅危惧II類に指定されています。
コイワザクラ (Primula reinii)：環境省レッドリストの絶滅危惧II類に指定されており、秩父多摩甲斐国立公園、丹沢大山国定公園、妙義荒船佐久高原国定公園などで保護されています。
ミョウギコザクラ (Primula reinii var. myogiensis)：妙義山の固有種で、別名「ミョウギイワザクラ」とも呼ばれ、環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されています。
チチブイワザクラ (Primula reinii var. rhodotricha)：石灰岩質の武甲山に分布しており、埼玉県横瀬[[町]]の町花です。環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されています。

種の保全状況評価

イワザクラは、環境省のレッドリストにおいて、準絶滅危惧（NT）に指定されています。かつては絶滅危惧IB類（EN）に指定されていましたが、保全活動の成果もあり、状況は若干改善しています。しかし、個体数は約900個体と推定されており、依然として厳しい状況にあります。主な減少要因としては、園芸目的の盗掘や、森林伐採、道路工事などの開発行為が挙げられます。


各都道府県のレッドリストでは、以下のように評価されています。

絶滅危惧IA類：宮崎県、熊本県
絶滅寸前種：奈良県（環境省の絶滅危惧IA類相当）
絶滅危惧I類：徳島県、鹿児島県（環境省の絶滅危惧IA類又はIB類相当）
絶滅危惧IB類：高知県
絶滅危惧II類：岐阜県、三重県
情報不足（DD）：愛媛県

イワザクラは、その美しい姿とは裏腹に、絶滅の危機に瀕している植物です。この貴重な種を未来に残していくために、保全活動への理解と協力が求められています。

関連項目

* サクラソウ属

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