鰐塚山

鰐塚山

鰐塚山（わにつかやま）は、宮崎県宮崎市、日南市、北諸県郡三股町にまたがる山で、鰐塚山地の最高峰です。標高は1,118mで、わにつか県立自然公園に指定されています。山頂からは、錦江湾や桜島などの美しい景色を一望できます。

概要

山頂へは、「わにつか渓谷いこいの広場」から始まる登山道を利用するか、自動車でアクセスできます。ただし、自動車道は道幅が狭いため注意が必要です。中腹にはかつて「わにつか渓谷いこいの広場」があり、キャンプ場などが整備されていましたが、2005年の台風14号による土石流でほぼ完全に破壊され、現在は利用できません。また、この災害の影響で地すべりの危険性が高まっており、宮崎市田野町側からのルート利用は自己責任となっています。

歴史

鰐塚山の名称は、山幸彦と海幸彦の説話に登場する鰐（短い龍）に由来するとされ、古くは「鰐ノ塚山」と呼ばれていました。

自然環境

山腹には人工林が多いですが、山頂付近にはモミ、アカガシ、ウリハダカエデ、ハウチワカエデなどの自然林が残されています。標高1,000メートルを超えるため、比較的冷涼な地域の植物が多く見られ、イワザクラやシモバシラなど、ここを南限とする植物が約30種確認されています。また、世界的に珍しいキリノミタケというキノコが生息しているほか、テンナンショウ属のヒュウガヒロハテンナンショウは、この山と鹿児島県の稲尾岳でしか見られない希少な植物です。

気候

鰐塚山の年間降水量は3,000ミリを超え、日本でも特に雨の多い地域の一つです。冬には、冷たく乾いた風「鰐塚おろし」が吹き、麓の宮崎市田野町ではこの風を利用した漬物大根作りが盛んです。一方で、暖かい南西風が山地を越えて吹き降ろすフェーン現象が発生すると、宮崎市周辺の気温が上昇することがあります。

天然の電波塔

鰐塚山は、観光地としてだけでなく、宮崎県内のテレビ・ラジオ放送の中継所として重要な役割を担っています。県内の全テレビ局とFMラジオ局の親局が設置されており、ここから発信される電波は、宮崎平野や都城盆地など、県内の約75%の人口地域をカバーしています。また、官公庁の無線設備やNTTの中継所も置かれています。

テレビ局の送信所は、当初宮崎市北部の平和台に設置する予定でしたが、中継局を大量に設置する必要があることから、マウンテン・トップ方式（標高の高い地点に送信所を設置し、広範囲をカバーする方式）に変更されました。調査の結果、鰐塚山山頂が最適地として採用され、1960年にNHKとMRTが開局しました。標高が高く災害時に孤立する可能性を考慮し、施設は当初から無人化されました。

その後、NHK Eテレ、NHK-FM[[放送]]、テレビ宮崎、エフエム宮崎、MRTラジオのFM補完[[中継局]]が開局し、2006年には地上デジタルテレビ放送も開始されました。

この送信所変更により、中継局数は平和台に設置した場合の約半分に抑えることができましたが、電波が県外にも届くスピルオーバーが発生しました。鹿児島県の放送局が鹿屋中継局を設置した理由の一つは、このスピルオーバーによる視聴者流出を防ぐためでした。また、遠方の放送局の電波にも影響があったため、広島県の放送局まで影響調査が行われました。

2013年8月23日に開局し、2016年6月30日にサービスを終了したジャパン・モバイルキャスティングの中継局についても、この項で記述します。

地上デジタルテレビ放送送信設備

2005年11月15日に予備免許、2006年11月21日に放送免許を取得し、同年12月1日に本放送を開始しました。物理チャンネル15ch（MRT、地上デジタル268ch）においては、地上デジタル放送Gガイドで提供されている番組表データも送信されています。UMKのERPは2007年12月時点では7.6kWでしたが、2016年現在は8.1kWとなっています。

地上アナログテレビ放送送信設備

NHK総合テレビは1960年7月、MRTは1960年10月、UMKは1970年4月にそれぞれ開局し、2011年7月24日のアナログテレビ終了に伴い運用を終了しました。鹿児島県方面への出力は、UMKが6kW、NHK・MRTが0.6kWに抑えられていました。NHK総合テレビは、マイクロ回線が開通する1960年10月までNHK鹿児島[[放送局]]（鶴丸放送所 3ch）の放送波中継を実施していました。

FMラジオ放送送信設備

NHK-FMは1964年7月1日に実用化試験局（モノラル）ならびに実験局（ステレオ）として運用を開始し、1969年3月1日に本放送を開始しました。エフエム宮崎はテレビ宮崎の施設を間借りしています。NHK-FMの実効輻射電力は2007年12月時点ではエフエム宮崎と同等の3.4kWでしたが、2016年現在は2.9kWとなっています。MRTラジオはFM補完[[中継局]]として2016年4月1日に本放送を開始しました。

マルチメディア放送送信設備

2013年8月23日から本放送を開始しましたが、2016年6月30日をもってサービスを終了しました。

道路

山頂へ至る道路としては、宮崎市田野町の田野駅から南下する県道343号鰐塚山田野停車場線（田野ルート）と、日南市北郷町の県道33号都城北郷線から北上し県道343号に合流する板谷林道（北郷ルート）があります。

最初に開通したのは田野ルートで、1960年のNHK[[宮崎[[放送]]局]]と宮崎[[放送]]の送信塔設置の際に田野町道として整備されました。1965年3月31日に県道として認定され、1980年には全線舗装されました。

2005年の台風14号による土砂崩れで山頂が孤立しましたが、約1週間後には北郷ルートが仮復旧し、2008年3月末には田野ルートも復旧しました。県道鰐塚山田野停車場線の復旧工事における指名競争入札では、官製談合があったとして当時の県知事が辞職し、後に逮捕され実刑判決を受けました。

開通までの経緯

NHKとMRTがテレビ送信所を設置する際、鰐塚山も候補地の一つでしたが、両者は山頂までのアクセス道路の敷設に難色を示していました。田野町は、陸上自衛隊西部方面隊に協力を要請し、小郡駐屯地の第5施設団が協力することになり、道路開通への目途が立ちました。

道路の全長は8,830メートルで、麓の2,395メートルを熊本営林局が負担し、残りの6,435メートルを地元（NHK、MRT、宮崎県、県内市町村）が負担することになりました。地元負担のうち、中腹（3,411メートル）を自衛隊、山頂（3,024メートル）を志多組が担当しました。自衛隊による工事は1959年5月8日から8月20日の期間で実施され、残りの区間を志多組が整備し、同年11月25日に完工式が挙行されました。

脚注

参考文献

『テレビ宮崎10年のあゆみ』 テレビ宮崎、1981年。
『宮崎[[放送]]三十年史』 宮崎[[放送]]、1984年。
田野町史編纂委員会・編『田野町史 下巻』 田野町、1984年。
日本放送協会・編 『20世紀放送史』 日本放送出版協会、2001年 ISBN 978-4-14-007199-1
無線局等情報検索 総務省。アナログテレビ放送は2007年12月閲覧時点のデータ、デジタルテレビ放送とFMラジオ放送は2016年4月閲覧時点のデータを用いています。

関連項目

宮崎ラジオ放送所 - 宮崎県内のAMラジオ局（中波）の親局に関する説明。

外部リンク

* 鰐塚山 - 宮崎市観光協会

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