盗掘

盗掘とは

盗掘とは、一般的に正当な権利を持たない者が、私有地や公有地に関わらず、土地を掘削し、そこから得られた財物（埋蔵物、動植物など）を窃取する行為を指します。特に、墓を荒らす場合は「墓荒らし」と呼ばれることが一般的です。

盗掘の定義

何が正当な「発掘」や「採掘」であり、何を「盗掘」とするかの基準は、時代や地域、それぞれの倫理観、価値観、宗教観、地位や立場によって見解が異なる場合があります。例えば、20世紀初頭のエジプトで、イギリスやナチス政権下のドイツが盛んに遺跡の発掘調査を行い、出土品を持ち去った行為は、エジプト国民から見れば貴重な文化財の盗掘とみなすことができます。また、現代の学術的な発掘作業も、実際には墓荒らしと同類であるという見方もあります。

盗掘の実態と問題点

遺跡を掘り、出土品を売りさばいて生計を立てる村では、盗掘が「仕事」とみなされることもあります。しかし、この行為は貴重な文化財を破壊し、特に墓などの遺跡の本来の状態や、被葬者、副葬品の配置からわかる当時の人々の考え方など、考古学的に重要な情報を破壊するものです。この点が、盗掘が最も許容されない行為とされる理由です。

根本的な対策としては、盗掘品の購入をやめ、盗掘者を生み出す土壌や国の経済状態を改善することが必要です。また、非合法的な盗掘と合法的な財宝探しとの区別は法律によって定義されます。近年、政府の許可を得て財宝を探すトレジャーハンターは、専門家をチームに加える傾向があります。

大規模な化石が発見された場合も、盗掘されるケースが多発しています。例えば、日本最古級の哺乳類や白亜紀の恐竜の化石が発見された「篠山層群」でも、盗掘跡が確認されています。盗掘行為自体を禁じる条例はあっても、盗掘者に対する原状回復を求めることしかできず、一般者の立ち入りを規制できない自治体が多いため、対応に苦慮しています。

希少植物・希少動物の卵の盗掘

ウミガメの卵などの食用目的や、野生ランや高山植物などの希少植物を狙う盗掘も後を絶ちません。希少植物の場合は、群落全体を狙う大規模な盗掘もあり、絶滅寸前になっている種も存在します。盗掘は愛好家によるものだけでなく、山取り品を販売する業者も関わっています。また、インターネット上には、盗掘を助長するような情報交換サイトも存在し、問題視されています。

日本では、絶滅危惧種に指定されている動植物は原則採取禁止ですが、許可を得れば採取が可能な場合もあります。

各国の墓荒らしの事例

盗掘の歴史は古く、世界中で行われてきました。

日本

日本では、古代から天皇陵の盗掘が度々発生しており、藤原定家の日記『明月記』にも盗掘に関する記述が見られます。

中国

古代中国では、皇帝の墓には侵入者を惑わせる仕掛けが施されていました。また、盗掘に関する記載は、紀元前の書物にも見られます。近年では、「盗墓小説」の影響もあり、盗掘が活発化しています。項羽や曹操などの著名な人物の墓も荒らされています。

アメリカ

1876年には、エイブラハム・リンカーンの墓を暴こうとする事件が発生しました。

ロシア

1920年代には、著名な医者であったニコライ・ピロゴフの墓が荒らされる事件がありました。

ヨーロッパ

組織的な犯罪による盗掘が行われており、貴重な考古資料が闇市場で取引されています。また、ホロドモールという大飢饉の際には、食料のために墓が荒らされるという悲惨な事件も起きています。

エジプト

エジプトでは、第20王朝時代には盗掘を取り締まるための警備隊が配置されていました。

有名な盗掘者

歴史上、盗掘を行ったとされる人物は多く存在します。中には、学術的な調査を行ったものの、その手法から「盗掘者」と揶揄される人物もいます。

マアムーン：アッバース朝のカリフで、ピラミッド内部を調査しました。
温韜：唐の歴代皇帝の陵墓を盗掘しました。
ハインリヒ・シュリーマン：考古学者ですが、その発掘手法から批判されることもあります。

盗掘を題材とした作品

盗掘は、様々な作品の題材にもなっています。エジプトの盗掘者の裁判記録や、フィクション作品まで、幅広く存在します。

『アボット・パピルス』
『トゥームレイダー』シリーズ
『中国盗墓史稿～未だ掘られざるの墓無し』
『魔術師カエムワセトの物語』
『奥州波奈志』
* 『鬼吹灯』

まとめ

盗掘は、貴重な文化財や自然を破壊する行為であり、その根絶のためには、盗掘品を購入しないこと、盗掘者を生み出す社会構造を改善すること、関係機関の連携強化などが重要です。

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