インジウム111

インジウム111（Indium-111）について

インジウム111（111In）は、特異な特性を持つ放射性同位体であり、一般に放射線医学の分野で広く用いられています。半減期は約2.8日で、電子捕獲によって安定したカドミウム111（111Cd）に崩壊します。この特性を活かし、優れた画像診断が可能となるため、医療現場で非常に重宝されています。

製造方法

インジウム111は、塩化インジウム111（111InCl）溶液の形で利用されます。この溶液は、国際原子力機関（IAEA）が推奨する手法に基づいて製造されます。具体的には、サイクロトロンを用いてカドミウムに陽子を照射することで生成されます。この際、112Cd(p,2n)か111Cd(p,n)のいずれかの方法が取られますが、前者の手法は放射性核種の純度が高いため、より一般的に使用されています。

放射線医学における利用

インジウム111の特徴的な性質のひとつは、放射性崩壊の際に低エネルギーのガンマ線を放出することです。そのガンマ線は、平面または単一光子放出コンピュータ断層撮影法（SPECT）を用いて画像化することができます。この技術では、111Inの一次エネルギー（ε）は171.3keV（91％）および245.4keV（94％）です。

モレキュラーイメージングの実際

インジウム111を調製した111InCl溶液は、抗体やペプチドなどの特定のタンパク質に結合させることが可能です。これにより、様々な病状に対する分子標的療法が特に効果を発揮します。一般的には、キレート剤と呼ばれる物質を使用し、放射性核種である111Inを標的分子に結合させて標識を作成します。このプロセスによって、目的の医療製品に応じたスムーズな調製が行われています。

111In標識抗体の例

• - イブリツモマブ チウキセタン：この抗体は、リンパ腫の免疫療法の前に、90Yによる照射線量の推定に使用されます。
• - インジウム (111In) カプロマブペンデチド：前立腺特異的膜抗原（PSMA）に結合し、前立腺癌の造影に用いられます。

111In標識ペプチド

一方、111In標識ペプチドの一例として111In-ペンテトレオチド（別名：111In-DTPA-オクトレオチド）があります。このペプチドは、ソマトスタチン受容体阻害剤として知られ、特に神経内分泌腫瘍の治療において用いられます。具体的には、交感神経系腫瘍や消化管・膵腫瘍、さらには甲状腺や小細胞肺癌に対しても効果が認められています。111In-ペンテトレオチドを用いた造影により、さまざまな腫瘍に関連するソマトスタチン受容体の存在や発現レベル、病状の評価が明確に確認できます。

血液細胞の標識

さらに、インジウム111は血液成分を標識するためにも使用されます。具体的には、111In-オキシキノリンとして製剤化することが可能です。この方法では、血小板や白血球を標識して、それぞれ血栓の検出や炎症の調査、さらには骨髄炎や感染症の確認といった用途で利用されています。白血球の動態を追跡することもできるため、非常に有効な診断手段となっています。

まとめ

インジウム111は、放射線医学において重要な役割を果たす放射性同位体です。その特性を活かし、様々な病理状態の診断や治療に寄与しています。今後もさらなる研究が進むことで、新たな応用が期待されます。

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