インターロイキン

インターロイキン (Interleukin)

インターロイキン（Interleukin、略称IL）は、細胞間のコミュニケーションを担うサイトカインと呼ばれるタンパク質の一種です。この名称は、「細胞間（inter-）」と「白血球由来（leukocyteを意味する-leukin）」に由来しており、主に免疫細胞、特にヘルパーT細胞によって分泌されるものが当初発見されたことにちなんでいます。

概要

当初、これらの物質は個別に異なる名称で呼ばれたり、リンパ球由来の「リンフォカイン」や単球・マクロファージ由来の「モノカイン」といった分類が混在し、研究者の間で混乱が生じていました。この状況を整理するため、1979年に命名規則が統一され、発見・同定された順に「IL」の後に番号を付けて呼ぶことになりました。現在では30種類以上のインターロイキンが確認されており、それぞれが免疫応答や炎症、細胞の増殖・分化など、生体内の様々な生理機能において特定の役割を担っています。

インターロイキンは、私たちの体を病原体から守る免疫システムの機能において極めて中心的な役割を果たしています。免疫細胞の活性化、増殖、分化、そして細胞間の連携を細かく制御することで、適切な免疫応答を誘導します。この重要な調節機能ゆえに、インターロイキンのバランスが崩れることは、自己免疫疾患（自分の体を攻撃してしまう病気）や免疫不全（免疫機能が十分に働かない状態）といった様々な難病の原因となることも知られています。近年では、インターロイキンやその働きを標的とした治療法も開発されており、多くの疾患に対する新たな治療選択肢として注目されています。

主要なインターロイキンとその機能

多数存在するインターロイキンの中でも、特に重要な役割を担うものがいくつかあります。以下に、代表的なインターロイキンの一部とその主要な機能を示します。なお、同じインターロイキンでも、細胞の種類や状況によって複数の機能を持つ場合や、リストにない細胞から産生される場合もあります。

IL-1：主にマクロファージから分泌され、発熱や炎症反応といった急性期反応を誘導する重要な役割を果たします。
IL-2：T細胞によって産生され、T細胞自身の増殖や、特定の機能を持つ細胞への分化を強力に促進します。がんの免疫療法においても利用されています。
IL-3：T細胞などから分泌され、骨髄にある造血幹細胞の増殖や分化を刺激し、様々な血液細胞の産生を促します。
IL-4：B細胞の増殖や抗体産生に関与するほか、T細胞や肥満細胞の分化を制御します。アレルギー反応においても重要な役割を担っています。
IL-5：B細胞からの特定の抗体（IgA）産生を刺激するほか、好酸球というタイプの免疫細胞を活性化させる働きがあります。
IL-6：マクロファージなどから分泌され、IL-1と同様に炎症や急性期反応の誘導に関与します。また、リンパ球の分化・成熟にも関わります。
IL-7：主に骨髄や胸腺のストロマ細胞から産生され、B細胞、T細胞、NK細胞といったリンパ球系の細胞の生存、分化、そして生体内の数の維持（ホメオスタシス）に不可欠です。
IL-8：様々な細胞から分泌され、好中球と呼ばれる免疫細胞を炎症部位などに誘導する（走化性）働きが強いサイトカインです。
IL-9：T細胞などから産生され、肥満細胞というアレルギー反応に関わる細胞を刺激する作用があります。
IL-10：主に制御性T細胞やB細胞などから産生され、免疫反応を抑制する働きを持ちます。特に樹状細胞の働きを抑え、特定のT細胞（Th1細胞）からのサイトカイン産生を阻害します。
IL-11：間葉系細胞やマクロファージなどから産生され、肝臓での急性期タンパク質の産生を促進する作用があります。
IL-12：樹状細胞やマクロファージから分泌され、NK細胞を活性化させたり、特定のT細胞（Th1細胞）への分化を誘導したりすることで、細胞性免疫の応答を助けます。
IL-13：主にT細胞から産生され、B細胞の増殖や分化を促し抗体産生を助ける一方で、炎症を引き起こすT細胞（Th1細胞）の働きを抑えたり、マクロファージからの炎症性サイトカイン産生を抑制したりする作用を持ちます。
IL-14：活性化されたB細胞の増殖を促す一方で、B細胞からの抗体産生を抑制するという、やや複雑な働きを持ちます。T細胞から産生されることが知られています。
IL-15：末梢血単球や上皮細胞など様々な細胞から産生され、キラーT細胞やNK細胞の活性化に重要な役割を果たします。また、B細胞の増殖や分化も誘導します。
IL-17：特定のT細胞（Th17細胞）から産生され、様々な組織細胞に働きかけて炎症性のサイトカインやケモカインの産生を誘導し、炎症反応を強く引き起こします。
* IL-18：マクロファージや樹状細胞などから産生され、インターフェロン-γという別の重要なサイトカインの産生を誘導することで、主に細胞性免疫や抗ウイルス応答に関与します。

これらのインターロイキンは単独で働くのではなく、互いに複雑に連携し、他のサイトカインとも協調しながら、生体内の精緻な免疫ネットワークを形成しています。その機能の解明は現在も進められており、新しい治療法の開発に繋がる重要な研究分野となっています。

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