好酸球

好酸球 (Eosinophil granulocyte)



概要


好酸球（こうさんきゅう、Eosinophil granulocyte）は、私たちの体を守る免疫システムの重要な担い手の一つであり、白血球を構成する細胞集団のうち、顆粒球と呼ばれるグループに属しています。

形態と特徴


健康な人の末梢血中で観察される好酸球は成熟した形態をしており、一般的な染色標本を用いて顕微鏡で観察すると、いくつかの特徴が見られます。細胞質は、エオジンという色素によく染まる、均質で比較的大きな橙黄色の顆粒（好酸性顆粒）で満たされています。これらの顆粒は細胞の機能に深く関わっています。核は通常、細い糸状のクロマチンでつながれた二つの部分（2分葉）から成り、細胞の辺縁に偏って位置しています。細胞全体の大きさは直径10〜15マイクロメートルで、他の顆粒球である好中球と比較するとやや大きい傾向があります。

存在比率


血液中の白血球全体に占める好酸球の割合は、通常0.5%から13%の範囲内です。

主な機能


好酸球は多様な生理機能を持っており、特にアレルギー反応や寄生虫（特に蠕虫類）感染への防御において重要な役割を果たします。I型アレルギー反応が生じた際には、好酸球の数が増加することが知られています。また、ヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質を不活性化する能力を持ち、これによりアレルギー反応による炎症を制御する働きをします。さらに、寄生虫が体内に侵入した場合、好酸球は感染部位に集結し、その排除に関与します。弱いながらも、異物を取り込んで消化する貪食能力も備えています。肥満細胞など特定の細胞から分泌されるインターロイキン-5（IL-5）という生理活性物質は、好酸球を活性化させ、その機能発揮を促進します。

顆粒とその成分


好酸球の細胞質に豊富に存在する顆粒は、その機能に不可欠な様々なタンパク質や酵素を含んでいます。

晶質体顆粒


好酸球の主要な顆粒の一つであり、電子顕微鏡で観察すると内部に特徴的な結晶状の構造（晶質体）が見られます。この顆粒には、特に以下の4つの主要なタンパク質が含まれています。

  • - 主要塩基性タンパク質 (Major Basic Protein, MBP)
  • - 好酸球カチオン性タンパク質 (Eosinophil Cationic Protein, ECP)
  • - 好酸球ペルオキシダーゼ (Eosinophil Peroxidase, EPO)
  • - 好酸球由来ニューロトキシン (Eosinophil-Derived Neurotoxin, EDN)

これらのタンパク質のうち、MBP、ECP、EPOは、原生動物や蠕虫類などの寄生虫に対して細胞を傷害する毒性（細胞毒性）を持ちます。これらの毒素は、寄生虫の神経系に作用してその機能を阻害する働きもします。さらに、この顆粒には、アレルギー反応で放出されるヒスタミンを分解してその働きを打ち消すヒスタミナーゼや、同じく好塩基球などから分泌されるロイコトリエンを中和するアリルスルファターゼなども含まれており、これらが炎症反応の調節に寄与しています。

アズール体


もう一つのタイプの顆粒であるアズール体には、リゾチーム（lysozyme）などの酵素が含まれています。これらの酵素は、好酸球が取り込んだ異物や細胞の残骸などを分解するのに役立ちます。

関連疾患


好酸球の数が増加したり、特定の組織に異常に浸潤したりすることは、様々な病気と関連しています。以下に好酸球が関与する主な疾患の一部を挙げます。


これらの疾患では、好酸球の機能異常や過剰な反応が病態の形成に関与していると考えられています。

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