インターロイキン-22

インターロイキン-22 (Interleukin-22, IL-22)

インターロイキン-22（IL-22）は、免疫系と組織細胞の間で情報伝達を担うサイトカインと呼ばれるタンパク質の一種です。ヒトではIL22遺伝子の指令に基づいて合成されます。サイトカインの中でも、構造的にアルファヘリックスというらせん状の構造を特徴とし、インターロイキン-10（IL-10）などが含まれるIL-10ファミリーに分類されます。このファミリーの多くのメンバーと同様に、IL-22は細胞が炎症反応などを起こす際に重要な働きをします。

構造と受容体

IL-22がその機能を発揮するためには、細胞表面にある特定の受容体（IL-22受容体、IL-22R）に結合する必要があります。この受容体は、IL10RB（またはIL10R2）とIL22R1という二つの異なるサブユニットが組み合わさった形（ヘテロ二量体）で存在します。IL-22はこの受容体複合体に結合することで、細胞内に信号を伝達します。IL-22受容体は体の様々な組織の細胞、特に皮膚や内臓の上皮細胞や間質細胞の表面に多く見られますが、免疫細胞にはほとんど発現していません。これは、IL-22の主な働きかけの相手が免疫細胞ではなく、体の組織細胞であることを示しています。

IL-22の働きを調節する別のタンパク質として、IL-22結合タンパク質（IL-22BP）があります。このタンパク質は可溶性の形態で存在し、IL-22が受容体に結合する部位を邪魔することで、IL-22の活性を抑制します。IL-22BPはIL-22受容体の一部であるIL22R1に似た構造を持っており、IL-22を「捕獲」することで受容体への結合を防ぐと考えられています。

機能

IL-22は主に、炎症が起きている場所などで、多様な免疫細胞によって産生されます。具体的には、ヘルパーT細胞の一種であるTh1、Th17、Th22細胞のほか、ガンマデルタT細胞、NKT細胞、自然リンパ球の一種（ILC3）、さらには好中球やマクロファージといった細胞からもIL-22が作られます。産生されたIL-22は、前述のように主に非免疫系の組織細胞、特に上皮細胞や間質細胞に作用します。

その主な機能は多岐にわたります。

細胞の生存・増殖促進: 肝臓、肺、腸などの上皮細胞が健康に保たれ、増殖するのを助け、組織の維持や修復に貢献します。
抗微生物因子の誘導: 細菌や真菌などの微生物から体を守るために働く物質（例えば、S100プロテインやディフェンシンなど）を組織細胞に作らせるよう促します。
組織保護と創傷治癒: 上記の機能を通じて、組織がダメージを受けるのを防いだり、傷が早く治るのを助けたりします。IL-22は体のバリア機能（皮膚や粘膜）の維持に特に重要です。
炎症への関与: 炎症反応の調節にも関わります。炎症を促進する側面もあれば、組織保護を通じて炎症によるダメージを抑える側面も持ち合わせています。IL-17Aなど他のサイトカインとの組み合わせによって、その炎症に対する影響が変化することがあります。

このように、IL-22は生体防御において重要な役割を担っていますが、その調節がうまくいかなくなると病気の原因となることもあります。例えば、全身性エリテトーデス、関節リウマチ、乾癬といった自己免疫疾患では、IL-22の過剰な働きが病気の進行に関与していることが知られています。

研究段階ではありますが、IL-22の働きを抑えることが、視神経が傷ついた後の神経再生を促進する可能性も示されており、病気治療への応用も期待されています。

シグナル伝達と産生調節

IL-22が受容体（IL22R1/IL10R2）に結合すると、細胞内で特定の信号伝達経路が活性化され、その機能が発揮されます。この信号伝達経路の一部にはIL10R2サブユニットが関与しており、これはIL-10ファミリーサイトカイン（IL-10、IL-26、IL-28、IL-29など）に共通する特徴です。

IL-22の産生は、主に別のサイトカインであるIL-23からの信号によって強く誘導されます。IL-23は、樹状細胞などが微生物成分などを認識するセンサー（Toll様受容体など）を介して活性化された際に作られます。特にDectin-1やNOD2といったセンサーからの信号がIL-23産生を促し、それがIL-22産生につながります。また、炎症性サイトカインであるIL-1βもIL-22の産生を刺激することが知られています。一方、前述のIL-22BPは、IL-22の働きを抑制する役割を果たします。

標的組織

IL-22が主に作用する標的組織は、その受容体が多く存在する非造血系の組織です。具体的には、皮膚、肝臓、肺、消化管（腸など）、腎臓、膵臓、胸腺、滑膜、心臓、乳房、眼、脂肪組織といった様々な臓器の上皮細胞や間質細胞に働きかけます。

IL-22は、これらの組織のバリア機能を維持し、微生物感染から体を守り、組織のダメージを修復するという、生体にとって非常に重要な防御システムの一翼を担っています。その複雑な機能や調節メカニズムの理解は、自己免疫疾患や感染症、組織損傷などの治療法開発において重要視されています。

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