イントラムロス
イントラムロスは、16世紀にスペイン人によって建設された城郭都市であり、フィリピンの首都マニラの中心部に位置しています。パシッグ川の南岸に位置し、その名前はスペイン語で「壁の内側」を意味します。かつてスペイン統治時代には、イントラムロスはマニラそのものであり、城壁の外とは明確に区別されていました。
ヨーロッパ人がルソン島に到達する以前、イントラムロスの地は「マイニラッド」と呼ばれ、マレー系イスラム教徒の大規模な居住地であり、地域の支配者たちの拠点でした。原住民のタガログ族はマレー人と同化し、ダトゥ、ラージャ、あるいはスルタンといった君主たちによって支配されていました。「ニラッドが生える場所」を意味するこの地名は、パシッグ川沿いに豊富に自生していた水草に由来します。マイニラッドはパシッグ川とマニラ湾に面しており、他のアジア諸国、特に明国との貿易が盛んに行われていました。
1564年、ミゲル・ロペス・デ・レガスピ率いるコンキスタドールたちがメキシコを出航し、1565年にセブ島に到着。フィリピン初のスペイン人植民地を築きました。原住民からマニラの繁栄を聞いたレガスピは、副官を派遣し、1570年にルソン島に到達。イスラム教徒の住民との間で争いが起きましたが、最終的には支配権を確立し、1571年にレガスピは現地の族長たちと平和条約を結び、マニラをスペインに引き渡しました。同年6月24日、マニラの戦略的な立地から、レガスピはこの地をスペイン植民地の新たな首都と宣言。スペイン王フェリペ2世はマニラに紋章と「著名にして永久に忠実なる都市」の称号を贈りました。
フィリピン初代総督ロペス・デ・レガスピは、城壁で守られた都市を計画し、1573年にフェリペ2世の王令に基づき、城郭都市イントラムロスの建設が始まりました。1574年には中国人海賊の襲撃を受けたため、城壁は当初の計画よりも強化され、厚さ8フィート、高さ22フィートの壁に囲まれた64ヘクタールの土地に及ぶ星形要塞となりました。1606年に完成したイントラムロスは、スペイン植民地時代の政治、軍事、宗教の中心地として機能しました。カトリック教会や修道院、学校が多く建設され、ドミニコ会、聖アウグスチノ修道会、フランシスコ会、イエズス会などが運営にあたりました。城壁内にはスペイン人とメスティーソのみが居住を許され、キリスト教徒の原住民と中国人は居住できませんでした。
西側の川沿いには船着き場があり、マニラ・ガレオンがアカプルコと連絡を取り、貿易に従事する住民が多くいました。総督の宮殿は1863年の地震で倒壊したため、マラカニャン宮殿に移転しました。1898年には米西戦争の結果、アメリカがフィリピンを統治するようになりました。
イントラムロスには、かつて以下のような多くの教会、修道院、学校、その他の施設が存在しました。
教会、女子修道院、礼拝堂
マニラ大聖堂
ルルド教会（エル・アルマネセール）
サン・アグスティン教会
サント・ドミンゴ教会（フィリピン諸島銀行）
サン・フランシスコ教会（マプア工科大学）
サン・イグナシオ教会（廃墟）
サン・ニコラス・デ・トレンティーノ教会（マニラ日報）
ベアテリオ・デ・ラ・コンパニーア・デ・ヘスス（光と音の美術館）
サンタ・クララ女子修道院（空地）
第三の尊き修道会の礼拝堂（マプア礼拝堂）
学校
アテネオ・ムニシパル・デ・マニラ大学（クラムシェル1）
ベアテリオ・コレヒオ・デ・サンタ・カタリーナ（レトラン小学校）
サン・フアン・デ・レトラン大学
サンタ・イサベル学院（クラムシェル2）
サンタ・ローサ学院
マニラ高等学校
マプア工科大学
マニラ市立大学
マクシモ・デ・サン・イグナシオ大学（マニラ市立大学）
その他
総督宮殿（1864年の地震で廃墟化。1976年に整地され、選挙管理委員会の庁舎が建つ）
アウディエンシア（聴聞院、旧最高裁判所および旧選挙管理委員会、廃墟）
アユンタミエント（市庁舎、廃墟だったが2009年に修復）
サン・フアン・デ・ディオス病院（フィリピン・リュケイオン大学）
インテンデンシア（管理局、廃墟）
大司教宮殿
サンタ・ポテンシアーナ宮殿（フィリピン赤十字社）
1942年、日本軍がフィリピン全土を占領。イントラムロスにあった聖トマス大学にはサント・トーマス収容所が設けられました。1945年にアメリカ軍を中心とする連合国軍が反撃を開始し、マニラの戦いでは多くの市民が犠牲になりました。この戦いでイントラムロスの大部分が破壊され、無傷で残ったのはサン・アグスティン教会のみでした。戦後、残った建物も大部分が取り壊されました。
1980年代、当時のファーストレディー、イメルダ・マルコスの指示のもと、イントラムロス管理局が街の復旧に取り組み、現在ではスペイン時代の雰囲気を残すマニラ唯一の地区となっています。現代的な開発はイントラムロスの外で行われており、城壁内には近代化の影響は最小限に抑えられています。かつての堀は埋め立てられ、ゴルフコースとなっています。サンティアゴ要塞は、スペイン時代のロマンスを感じられる観光スポットです。2003年には、観光局長官がイントラムロスのライトアップと光と音の美術館建設のための資金を調達し、市民ボランティアと共に清掃活動が行われました。
イントラムロスは現在、マニラ市立大学、マプア工科大学、フィリピン・リュケイオン大学、サン・フアン・デ・レトラン大学など、多くの高等教育機関の拠点となっています。中世の要塞設計に従い、稜堡、半月堡、砦が戦略的に配置され、門は修復または再建されています。これらの特徴的な場所には、バルアルテ・デ・サンディエゴ、バルアルテ・デ・サン・フランシスコ・デ・ディラーオ、プエルタ・レアルなどの名前が付けられています。
Explore Intramuros!
歴史
前スペイン時代
ヨーロッパ人がルソン島に到達する以前、イントラムロスの地は「マイニラッド」と呼ばれ、マレー系イスラム教徒の大規模な居住地であり、地域の支配者たちの拠点でした。原住民のタガログ族はマレー人と同化し、ダトゥ、ラージャ、あるいはスルタンといった君主たちによって支配されていました。「ニラッドが生える場所」を意味するこの地名は、パシッグ川沿いに豊富に自生していた水草に由来します。マイニラッドはパシッグ川とマニラ湾に面しており、他のアジア諸国、特に明国との貿易が盛んに行われていました。
スペイン時代
1564年、ミゲル・ロペス・デ・レガスピ率いるコンキスタドールたちがメキシコを出航し、1565年にセブ島に到着。フィリピン初のスペイン人植民地を築きました。原住民からマニラの繁栄を聞いたレガスピは、副官を派遣し、1570年にルソン島に到達。イスラム教徒の住民との間で争いが起きましたが、最終的には支配権を確立し、1571年にレガスピは現地の族長たちと平和条約を結び、マニラをスペインに引き渡しました。同年6月24日、マニラの戦略的な立地から、レガスピはこの地をスペイン植民地の新たな首都と宣言。スペイン王フェリペ2世はマニラに紋章と「著名にして永久に忠実なる都市」の称号を贈りました。
フィリピン初代総督ロペス・デ・レガスピは、城壁で守られた都市を計画し、1573年にフェリペ2世の王令に基づき、城郭都市イントラムロスの建設が始まりました。1574年には中国人海賊の襲撃を受けたため、城壁は当初の計画よりも強化され、厚さ8フィート、高さ22フィートの壁に囲まれた64ヘクタールの土地に及ぶ星形要塞となりました。1606年に完成したイントラムロスは、スペイン植民地時代の政治、軍事、宗教の中心地として機能しました。カトリック教会や修道院、学校が多く建設され、ドミニコ会、聖アウグスチノ修道会、フランシスコ会、イエズス会などが運営にあたりました。城壁内にはスペイン人とメスティーソのみが居住を許され、キリスト教徒の原住民と中国人は居住できませんでした。
西側の川沿いには船着き場があり、マニラ・ガレオンがアカプルコと連絡を取り、貿易に従事する住民が多くいました。総督の宮殿は1863年の地震で倒壊したため、マラカニャン宮殿に移転しました。1898年には米西戦争の結果、アメリカがフィリピンを統治するようになりました。
本来の建造物
イントラムロスには、かつて以下のような多くの教会、修道院、学校、その他の施設が存在しました。
教会、女子修道院、礼拝堂
マニラ大聖堂
ルルド教会（エル・アルマネセール）
サン・アグスティン教会
サント・ドミンゴ教会（フィリピン諸島銀行）
サン・フランシスコ教会（マプア工科大学）
サン・イグナシオ教会（廃墟）
サン・ニコラス・デ・トレンティーノ教会（マニラ日報）
ベアテリオ・デ・ラ・コンパニーア・デ・ヘスス（光と音の美術館）
サンタ・クララ女子修道院（空地）
第三の尊き修道会の礼拝堂（マプア礼拝堂）
学校
アテネオ・ムニシパル・デ・マニラ大学（クラムシェル1）
ベアテリオ・コレヒオ・デ・サンタ・カタリーナ（レトラン小学校）
サン・フアン・デ・レトラン大学
サンタ・イサベル学院（クラムシェル2）
サンタ・ローサ学院
マニラ高等学校
マプア工科大学
マニラ市立大学
マクシモ・デ・サン・イグナシオ大学（マニラ市立大学）
その他
総督宮殿（1864年の地震で廃墟化。1976年に整地され、選挙管理委員会の庁舎が建つ）
アウディエンシア（聴聞院、旧最高裁判所および旧選挙管理委員会、廃墟）
アユンタミエント（市庁舎、廃墟だったが2009年に修復）
サン・フアン・デ・ディオス病院（フィリピン・リュケイオン大学）
インテンデンシア（管理局、廃墟）
大司教宮殿
サンタ・ポテンシアーナ宮殿（フィリピン赤十字社）
第二次世界大戦
1942年、日本軍がフィリピン全土を占領。イントラムロスにあった聖トマス大学にはサント・トーマス収容所が設けられました。1945年にアメリカ軍を中心とする連合国軍が反撃を開始し、マニラの戦いでは多くの市民が犠牲になりました。この戦いでイントラムロスの大部分が破壊され、無傷で残ったのはサン・アグスティン教会のみでした。戦後、残った建物も大部分が取り壊されました。
現在のイントラムロス
1980年代、当時のファーストレディー、イメルダ・マルコスの指示のもと、イントラムロス管理局が街の復旧に取り組み、現在ではスペイン時代の雰囲気を残すマニラ唯一の地区となっています。現代的な開発はイントラムロスの外で行われており、城壁内には近代化の影響は最小限に抑えられています。かつての堀は埋め立てられ、ゴルフコースとなっています。サンティアゴ要塞は、スペイン時代のロマンスを感じられる観光スポットです。2003年には、観光局長官がイントラムロスのライトアップと光と音の美術館建設のための資金を調達し、市民ボランティアと共に清掃活動が行われました。
イントラムロスは現在、マニラ市立大学、マプア工科大学、フィリピン・リュケイオン大学、サン・フアン・デ・レトラン大学など、多くの高等教育機関の拠点となっています。中世の要塞設計に従い、稜堡、半月堡、砦が戦略的に配置され、門は修復または再建されています。これらの特徴的な場所には、バルアルテ・デ・サンディエゴ、バルアルテ・デ・サン・フランシスコ・デ・ディラーオ、プエルタ・レアルなどの名前が付けられています。
参照
Explore Intramuros!
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。