インドネシアの地方行政区画

インドネシアの地方行政は、州を頂点とする階層構造で構成されています。州は最上位の行政単位であり、州知事がその長を務め、5年ごとに選出されます。州の下には、県（カブパテン）と市（コタ）が置かれていますが、これらは名称が異なるだけで、制度的には同等の存在です。一般的に、農村部が中心の地域は県、都市部が中心の地域は市と呼ばれます。

これらの行政単位はそれぞれ独自の政府、議会、そして首長（例えば、州政府、州議会、州知事）を持ちます。州は中央政府の代理機関としての側面を持つ一方で、県と市は地方自治に特化した役割を担っています。県は通常5つ以上の郡（クチャマタン）から、市は4つ以上の郡から構成されており、これらの郡はさらに区（クルラハン）に細分化されます。ただし、農村部では区ではなく、地域の特性に応じた境界を持つ村（デサ）が存在し、区よりも高い自治権を持っています。区長は郡長の提案に基づき県知事または市長によって任命されるのに対し、村長は住民による直接選挙で選出され、県知事または市長によって任命されます。

しかしながら、村は財政的に自治を維持することが困難な場合が多く、区へと移行するケースも少なくありません。また、特殊な存在として特別地区（カワサン・クスス）があります。これらは、特別行政地区、自由貿易地区、産業活動促進地区といった特区として、州、県、または市の下に設置されます。これらの地区では、地方政府とは別に、大統領が任命した委員を含む地域評議会や自由貿易地区運営機関が政策決定や運営を行います。バタム島、ビンタン島、カリムン島などは自由貿易地区の例として知られています。

州について
2022年12月時点で、インドネシアには38の州が存在します。このうち9つの州は特別な地位を有しています。アチェ州は同国で唯一シャリーアに基づく州法を制定しており、ジャカルタ首都特別州は首都としての特別な地位を持ちます。ジョグジャカルタ特別州では伝統的なスルターンが州知事を務め、パプア州、西パプア州、中部パプア州、山岳パプア州、南パプア州、南西パプア州はパプア特別自治法により自治権を持っています。

インドネシアの州の歴史は、独立宣言後に共和国政府によって宣言された8つの州に遡ります。1949年のオランダによる独立承認後、インドネシアは連邦制を採用しましたが、単一国家への国民の要望が高まり、1950年に10州からなる単一国家へと移行しました。その後、1999年には26州に、2008年には33州に増加し、2012年には34番目の州として北カリマンタン州が設置されました。2022年には中部パプア州、山岳パプア州、南パプア州が新設され、さらに同年には南西パプア州が分離・設立され、現在の38州に至っています。インドネシア政府は2025年までに現存の34州を分割し、44州とするという目安を公表していますが、「これはあくまで指針であり、目標値ではない」としています。

かつて存在した州
過去には、インドネシア連邦共和国の構成国として、スマトラ州、中部スマトラ州、小スンダ州、ヌサ・トゥンガラ州、東ティモール州、カリマンタン州、スラウェシ州などが存在しました。特に東ティモール州は、1976年に独立宣言した東ティモールを併合後に設置されましたが、国際的な承認を得られず、1999年に国際連合東ティモール暫定行政機構に移管され、2002年に東ティモール民主共和国として独立を回復しました。

州の変遷は複雑ですが、州名は一部を除いて現行の名称を使用しています。また、インドネシアには2020年時点で416の県と98の市が存在します。

これらの行政区分は、インドネシアの多様な地域特性を反映し、それぞれの地域における自治を支える重要な枠組みとなっています。

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