インド型装輪装甲輸送車

インド型装輪装甲車 (ACV-IP)：第二次世界大戦下のインドの戦車開発

第二次世界大戦下、イギリス軍はイギリス連邦への装甲戦闘車両の供給が不足しました。このため、多くの連邦国は自国で装甲車の開発・生産を余儀なくされました。高度な産業技術を必要とする戦車と異なり、装甲車は比較的容易に製造可能だったためです。

インドにおいても、この状況を背景に、独自の装輪装甲車であるインド型装輪装甲輸送車（ACV-IP）が開発されました。ACV-IPは、カナダから輸出されたフォード社やゼネラルモーターズ社のCMPトラックの車体をベースに、インドで製造されました。車体の装甲板はインド鉄道会社で組み立てられ、武装は主にブレン軽機関銃が装備され、一部の派生型にはボーイズ対戦車ライフルを搭載した小さな砲塔が備え付けられました。また、No. 19無線機も搭載されていました。

ACV-IPの生産は1940年から1944年まで続けられ、総数は4,655両に達しました。製造拠点であるタタ・ロコモーティブの工場所在地から、タタナーガースと呼ばれることもありました。これらの車両は、極東、中東、北アフリカ、そしてイタリア戦線など、様々な戦線でインド軍によって運用されました。偵察、兵員輸送、対空兵器輸送、前進観測など、幅広い任務に投入されました。師団隷下の偵察部隊が主要な使用者でした。

ACV-IPの派生型

ACV-IPには、いくつかの派生型が存在しました。主な違いは、ベースとなったトラックの型式、装甲の厚さ、搭載する武装などにあります。主な派生型を以下に示します。

マークI: 初期の型で、フォード社製1940年型トラックの車体と前部エンジンを使用し、マーモン・ハリントンの四輪駆動キットを装備していました。
マークII: フォード社製CO11QRFトラックをベースとしており、全輪駆動で後部エンジン、右側操縦席という特徴を持っていました。
マークIIA: 車体の装甲に改良が加えられました。
マークIIB: マークIIと比較して、装甲が強化されました。
マークIIC: フォード社製C191QRFトラックをベースに、装甲天井とブレン軽機関銃を搭載した砲塔を備えています。
マークIII: マークIICとほぼ同様ですが、車体にわずかな変更が加えられています。約276両が生産されました。
* マークIV: フォード社製C291QRトラックをベースとした、開放型の車体を持つ型です。

ACV-IPの戦場での役割

ACV-IPは、インド軍において様々な役割を果たしました。その機動性と比較的良好な防御力を活かし、偵察任務や兵員輸送任務に多く用いられました。また、対空兵器や観測機器を搭載した車両も存在し、戦闘における柔軟な運用を可能としていました。戦場の状況に合わせて、多様な任務に対応できる汎用性の高い装甲車であったと言えます。

まとめ

ACV-IPは、第二次世界大戦におけるインドの戦車開発において重要な役割を果たした装輪装甲車です。限られた資源と技術の中で、実戦投入可能な車両を開発・生産したインドの技術力と、戦場での柔軟な運用能力は高く評価できます。その歴史と多様な派生型は、当時の戦時下の状況を理解する上で貴重な資料となっています。様々な資料から、その存在と活躍について学ぶことができます。

もう一度検索