インヴィンシブル級巡洋戦艦

インヴィンシブル級巡洋戦艦

インヴィンシブル級巡洋戦艦は、イギリス海軍において初めての巡洋戦艦に位置付けられる艦であり、伝統的な戦艦の枠を超えて設計されました。この艦は、第一海軍卿ジョン・アーバスノット・フィッシャーが提唱した「高速こそが最大の防御である」という理念に基づいており、高い速度と強力な火力を兼ね備えています。特に、戦艦に匹敵する攻撃力と巡洋艦の運動性を持つ新しい艦種として注目を集めました。

概要

この級の艦艇は、弩級戦艦「ドレッドノート」の建造と同時に計画されました。単一口径の主砲を搭載し、速力においてもドレッドノートを上回る設計がなされました。巡洋戦艦は、まさにこの新しい概念の具現化であり、従来の装甲巡洋艦は一気に時代遅れとされました。インヴィンシブル級は、主砲口径を保持しつつも、機関出力がドレッドノートの約1.8倍に達し、速力も4.5ノット上回る能力を持っています。加えて、排水量は若干軽いものの、全長は長く設計されており、高速航行が可能な形状となっていました。

艦体構造

インヴィンシブル級の船体は、当時の他のイギリス戦艦や装甲巡洋艦とは異なる長船首楼型のデザインが採用されています。艦首には新設計の「Mark X 30.5cm(45口径)砲」が配置され、艦橋にはその背後に司令塔を持つ開放型の三脚式前檣が立っています。煙突は三本あり、主砲塔との配置の関係で接近して立てられ、一因として艦のデザインが影響します。艦載艇は甲板のスペースの都合上、煙突周辺に配置されており、非常に工夫が凝らされています。

主砲と火力

本級の主砲は新設計の「Mark X 30.5cm(45口径)砲」であり、射程や貫通力に優れています。特に、射程9,140mで269mmの舷側装甲を貫通することができ、仰角と俯角の調整も可能です。発射速度は毎分1.5発とされたものの、電動式による動作が採用され、当時のイギリス海軍には新しい挑戦となりました。しかし、機構の脆弱性から故障が多発し、最終的には既存の水圧式へと改造される運命を辿りました。

副砲と防御

副砲は新たに口径10.2cmの「Mark III 10.2cm(45口径)砲」を採用し、砲では水雷艇への対応力をアップグレードしましたが、実用性には課題も残りました。一方、艦の防御能力は旧装甲巡洋艦には及ばない状態であり、特に艦尾部分は防護が薄く、戦闘において脆弱な面が露呈しました。

機関と航行性能

搭載された機関はヤーロー式の石炭・重油混焼水管缶を使用し、二軸タービンを組み合わせた構造です。この設計により、最高出力約41,000馬力を発揮し、最高速力は25.5ノットに達しましたが、機関室の配置は弾薬庫との共存を求めるため危険が伴いました。

艦歴と影響

同型艦には「インヴィンシブル」、「インドミタブル」、「インフレキシブル」があり、1908年にそれぞれ竣工しました。「インヴィンシブル」はユトランド沖海戦に参加し、脆弱性が露わになることとなりました。結局、当初の設計理念とは裏腹に、巡洋戦艦としての限界を示す例となりました。残るインドミタブルとインフレキシブルは、その後の戦闘に際し改良が施されたものの、最終的には1921年に売却されました。これらの艦は、艦艇設計の歴史において重要な位置を占めています。

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