イーハトーヴ交響曲

『イーハトーヴ交響曲』

『イーハトーヴ交響曲』は、作曲家・冨田勲が宮沢賢治の文学作品に触発され、作曲した交響曲です。この作品は、管弦楽と合唱に加え、バーチャルシンガーの初音ミクをソリストとして起用している点が大きな特徴です。初演は2012年11月23日に東京オペラシティにて、大友直人指揮、日本フィルハーモニー交響楽団によって行われました。

概要

この交響曲は、宮沢賢治の作品世界を音楽で表現することを試みたもので、彼の文学作品からのインスピレーションを基に構成されています。特に、初音ミクをソリストに迎えたことは、クラシック音楽の世界に新たな風を吹き込む試みとして注目されました。初演時の演奏には、以下のメンバーが参加しています。

初音ミク（ヴァーチャル・シンガー／ライブ演奏：篠田元一）
梯郁夫（パーカッション）
ことぶき光（エレクトロニクス）
慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団、同OB合唱団、聖心女子大学グリークラブ（合唱指揮：下河原健太）
シンフォニーヒルズ少年少女合唱団（児童合唱指揮：宮本益光）

初演のライブ録音では、全7楽章の演奏時間は合計35分50秒となっています。

楽章構成

『イーハトーヴ交響曲』は以下の7つの楽章で構成されています。

1. 第1楽章 - 岩手山の大鷲〈種山ヶ原の牧歌〉
2. 第2楽章 - 剣舞／星めぐりの歌
3. 第3楽章 - 注文の多い料理店 ※
4. 第4楽章 - 風の又三郎 ※
5. 第5楽章 - 銀河鉄道の夜 ※
6. 第6楽章 - 雨にも負けず
7. 第7楽章 - 岩手山の大鷲〈種山ヶ原の牧歌〉 ※

※印のある楽章では、初音ミクによる歌唱がフィーチャーされています。

引用曲

この交響曲には、以下の楽曲が引用されています。これらの引用は、宮沢賢治の作品世界を音楽的に深めるための重要な要素となっています。

宮澤賢治（作詞）､ 杉原泰蔵（作曲）「風の叉三郎」（1940年の同題の日活映画の主題曲）－　引用先：風の又三郎（第3楽章）
ヴァンサン・ダンディ（作曲）「フランスの山人の歌による交響曲」　－　引用先：岩手山の大鷲（第1楽章）、剣舞（第2楽章）、注文の多い料理店（第3楽章）、剣舞（第7楽章）
セルゲイ・ラフマニノフ（作曲）「交響曲第2番」第3楽章　－　引用先：銀河鉄道の夜（第5楽章）
宮澤賢治（作詞、編曲）「種山ヵ原」　－　引用先：岩手山の大鷲（第1楽章、第7楽章）
宮澤賢治（作詞、編曲）「牧歌」　－　引用先：岩手山の大鷲（第1楽章、第7楽章）
宮澤賢治（作詞、編曲）「剣舞の歌」　－　引用先：剣舞（第2楽章）
宮澤賢治（作詞、作曲）「星めぐりの歌」　－　引用先：剣舞（第2楽章）

楽曲内で想定・引用された宮沢賢治の作品

この交響曲は、以下の宮沢賢治の作品から影響を受けています。

「注文の多い料理店」
「風の叉三郎」
「銀河鉄道の夜」
「雨ニモマケズ」

これらの作品が、交響曲の各楽章のテーマや雰囲気を作り出す上で重要な役割を果たしています。

アルバム

『イーハトーヴ交響曲』のライブ録音は、複数の形式でアルバム化されています。

2013年1月23日：日本コロムビアからCOGQ-62 Hybrid CD（CD、SACD両対応）として発売。アンコール曲として「リボンの騎士」「青い地球は誰のもの」も収録。
2014年3月19日：2013年9月15日の東京公演のライブ映像＋録音のブルーレイアルバム「イーハトーヴ交響曲 [Blu-ray]」が日本コロムビアから発売（品番：COXO-1074）。
2021年3月31日：初演ライブの録音をLPレコード（アンコール曲を7ｃｍEP盤に入れた）二枚組として日本コロムビアから発売（品番COJO-9410～1、刺繍アート豪華盤が品番COJO-9412～3）。

これらのアルバムは、この交響曲の魅力を様々な形で体験できる貴重な資料となっています。

演奏記録

『イーハトーヴ交響曲』は、初演以降、国内外で数多くの演奏が行われてきました。主な演奏記録は以下の通りです。

2012年11月23日：東京オペラシティにて初演（指揮：大友直人、日本フィルハーモニー交響楽団）。
2013年8月29日：岩手県花巻市文化会館（指揮：大友直人、日本フィルハーモニー交響楽団）。
2013年9月1日：愛知県芸術劇場大ホール（指揮：大友直人、セントラル愛知交響楽団ほか）。
2013年9月15日・16日：東京渋谷Bunkamuraオーチャードホール（指揮：河合尚市、東京フィルハーモニー交響楽団ほか）。
2013年9月21日：大阪オリックス劇場（指揮：河合尚市、大阪交響楽団ほか）。
2014年8月19日：大阪府フェスティバルホール、「プロムナードコンサート2014」（指揮：大友直人）。
2014年11月25日：岩手県民会館大ホール、「題名のない音楽会」で吹奏楽版を演奏（TV番組収録）。
2015年5月20日：中国・北京世紀劇院、「相約北京」（指揮：河合尚市、EOS交響文献楽団ほか）。
2015年11月26日：岩手県民会館大ホール（いわてフィルハーモニーほか）。
2016年11月11日-12日：冨田勲 追悼特別公演にて『イーハトーヴ交響曲』を演奏。
2019年9月6日：ウェスタ川越 大ホール、トリビュートコンサート「冨田勲という宇宙」にて一部楽章を演奏（指揮：河合尚市）。

これらの演奏記録は、『イーハトーヴ交響曲』が多くの人々に愛され、多様な形で演奏されてきたことを示しています。

外部リンク

日本コロムビア内特設サイト
「初音ミクの生みの親が語る、冨田勲と『イーハトーヴ交響曲』とバーチャルシンガーの未来」（BARKS、インタビュー記事、2021年4月26日）

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