ウィニペグ・ジェッツ (2011-)

ウィニペグ・ジェッツとは



ウィニペグ・ジェッツは、北米最高峰のプロアイスホッケーリーグであるナショナルホッケーリーグ(NHL)に加盟するチームです。カナダ中央部、マニトバ州の州都ウィニペグを本拠地として活動しています。

このチームについて解説する上で注意が必要なのは、1996年まで同じウィニペグを拠点とし、同名の「ウィニペグ・ジェッツ」というチームが活動していたことです。しかし、現在NHLに所属するウィニペグ・ジェッツは、その旧チーム(現在はアリゾナ・コヨーテズとして知られています)とは経営母体や歴史的経緯が全く異なる、別個のフランチャイズとして扱われます。本稿では、現在のウィニペグ・ジェッツの歴史と変遷に焦点を当てて記述します。

前身フランチャイズ:アトランタ・スラッシャーズ



現在のウィニペグ・ジェッツの起源は、ジョージア州アトランタに遡ります。チームの直接の前身は、1997年にNHLに新規参入したアトランタ・スラッシャーズでした。これは、1980年カルガリーへ移転したアトランタ・フレームスの後継となる形で与えられたフランチャイズ権でした。スラッシャーズは、参入から10年後の2007年に一度だけスタンレー・カップ・プレーオフ進出を果たしましたが、ファーストラウンドでニューヨーク・レンジャースに4連敗を喫し、すぐに敗退しました。この一度のプレーオフ進出以降は、チームは概ねリーグ下位に低迷するシーズンが続き、プレーオフ争いに加わることは稀でした。経営面でも観客動員でも厳しい状況が続きました。

ウィニペグへの移転と「ジェッツ」の再来



2011年を迎える頃、経営不振と観客減少に苦しむアトランタ・スラッシャーズが、新たな本拠地への移転を模索しているというニュースが広まり始めました。これに強く反応し、熱狂的な期待を寄せたのがウィニペグ市民でした。長年NHLチームが存在しなかったウィニペグでは、かつて街の象徴でもあった「ジェッツ」という名のチーム復活への期待が急速に高まります。

こうした状況の中、2011年5月にはカナダのスポーツ・エンターテイメント企業であるトゥルー・ノース・スポーツ・アンド・エンターテイメント社に、スラッシャーズの所有権が譲渡されることが決定しました。そして同月31日、NHLコミッショナーからフランチャイズマニトバ州ウィニペグへ移転することが正式に発表されました。この歴史的な発表はウィニペグの街を熱狂の渦に包み込み、なんと新チームのシーズンチケットは、発表からわずか数日で完売するという驚異的な現象が起こりました。その後、チーム名をウィニペグのファンに長年親しまれてきた「ウィニペグ・ジェッツ」に改めることが発表され、同年6月にはNHLからの正式な承認を得て、新たな「ウィニペグ・ジェッツ」が誕生しました。

チーム名とシンボルの意味



新生ウィニペグ・ジェッツのチーム名「ジェッツ」は、その由来が明確です。ウィニペグ郊外に所在する北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の空軍基地と、そこに配備されているジェット機(戦闘機)に敬意を表して名付けられました。チームの新しいロゴマークも、この由来を反映したデザインです。カナダの象徴であるメイプルリーフ(サトウカエデ)をベースに、その中に戦闘機のシルエットが巧みに組み込まれており、飛行機とカナダという要素が融合した力強いシンボルとなっています。新しいロゴとユニフォームのお披露目式は、実際に空軍基地で行われるという、チーム名の由来にふさわしい特別な形で行われました。

移転後の歩みとプレーオフ挑戦の軌跡



ウィニペグに移転してからのジェッツも、すぐにはリーグの強豪とはなれませんでした。しばらくはプレーオフ進出に手が届かないシーズンが続きます。リーグのカンファレンス再編に伴い、2013-14シーズンからはイースタン・カンファレンスからウエスタン・カンファレンスへと所属が変更されました。チームにとってウィニペグ移転後初のプレーオフ進出は、翌2014-15シーズンに実現しました。しかし、ファーストラウンドでアナハイム・ダックスに4連敗を喫し、シリーズ突破はなりませんでした。

真の躍進を見せたのは2017-18シーズンです。この年、チームはレギュラーシーズンで素晴らしい成績を収め、プレーオフに進出。アトランタ・スラッシャーズ時代を含めてもフランチャイズ史上初めて、プレーオフシリーズでの勝利を達成しました。その勢いのまま勝ち進み、チーム史上初となるカンファレンスファイナル(決勝シリーズ)まで駒を進めました。初のスタンレー・カップ・ファイナル進出への期待が高まる中、対戦相手はベガス・ゴールデンナイツでしたが、結果は1勝4敗で敗退し、惜しくも頂点への挑戦は次へと持ち越しとなりました。

ウィニペグ・ジェッツは、一度はチームを失った街にNHLの灯を再び灯し、熱狂的なファンに支えられながら、リーグの舞台で新たな歴史を刻み続けています。

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