ニューヨーク・レンジャース
ニューヨーク・レンジャース（New York Rangers）は、ナショナルホッケーリーグ（NHL）に加盟する、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨークを拠点とするプロアイスホッケーチームです。1926年の創設以来、リーグの黎明期を支えた「オリジナル・シックス」の一角を占め、長い歴史の中で数々のドラマを生み出してきました。
チームは1926年、テックス・リカード氏によってNHLの意向を受け創設されました。当初は彼の名にちなんで「テックス・レンジャース」とも呼ばれ、そのニックネームが定着しました。テックス・リカードは、コーチのレスター・パトリックを含むチームの体制を刷新し、トロント・メープルリーフスの名コーチとなるコーン・スマイスらを獲得するなど、勝利を目指すチーム作りを進めました。設立初年度から好成績を収め、アメリカン・ディビジョンを首位で終えましたが、プレーオフでボストン・ブルーインズに敗れました。
しかし、わずか設立2年目の1928年には、スタンレー・カップ優勝という快挙を達成します。決勝ではモントリオール・マルーンズを破りましたが、このシリーズ第2戦では、ゴーリーのローン・チャボットが負傷した際に、コーチのレスター・パトリック自らが代役としてゴールを守るという前代未聞の出来事がありました。1929年には再び決勝に進出するも敗退し、1930年代初頭は成績が安定しない時期が続きました。1933年には、ビル・クック、バン・クックのクック兄弟と、センターのフランク・バウチャーらの活躍により、トロント・メープルリーフスを下して2度目のカップを獲得しました。その後も勝率5割前後の成績が続き、1940年にはフランク・バウチャーがコーチに就任した年に、メープルリーフスを破り3度目のスタンレー・カップ優勝を果たしました。
1940年代半ばにはチームは極度の低迷期を迎え、中には0対15といった大敗を喫する試合もありました。1948年には5年連続でプレーオフ進出を逃した後、奇跡的に決勝まで進出しましたが、翌1949年は再び早期敗退しました。1950年には、ホームアリーナであるマディソン・スクエア・ガーデンでサーカスの興行が行われたため、レギュラーシーズンの主催試合全てをトロントで代替開催するという異例の事態となりました。この年、レンジャースは決勝まで勝ち進みましたが、デトロイト・レッドウィングスとの第7戦延長戦で惜敗しました。
その後20年以上にわたり、チームは低迷期が続きましたが、1960年代後半には若い力が台頭し始め、1967年には新たなマディソン・スクエア・ガーデンへ本拠地を移転しました。新人ゴーリーのエディ・ジャコミンらの活躍もあり、チームは5年ぶりにプレーオフへ復帰しました。1972年には、チーム最多得点を挙げていたジャン・ラットルを欠きながらもスタンレー・カップ決勝に進出しますが、ボストン・ブルーインズに敗れました。ブラッド・パーク、ヴィク・ハドフィールド、ロッド・ギルバートといった有力選手たちの活躍により、その後もプレーオフ常連となりました。1970年代後半には、ブルーインズからフィル・エスポジトを獲得するなど戦力強化を図り、1979年には再びカップ決勝に進出しますが、モントリオール・カナディアンズに敗れ優勝には至りませんでした。
1980年代から1990年代にかけて、レンジャースはほぼ毎年プレーオフに進出する安定した強さを見せましたが、スタンレー・カップにはなかなか手が届きませんでした。特に1985-86シーズンには、新人ゴーリーのジョン・バンビーズブルックの活躍でカンファレンス決勝まで進出しましたが、カナディアンズに敗退しました。
この多くのプレーオフでの苦い経験は、ファンの間で「1940年の呪い」というジンクスを生み出しました。これは1940年の優勝後、チーム首脳陣が優勝カップを使ってある行為を行ったことから始まったという伝説です。この「呪い」は、1991-92シーズンに会長賞（レギュラーシーズン最高成績）を獲得しながらも、プレーオフでピッツバーグ・ペンギンズに逆転負けした際にファンの間で広く語られました。
しかし、1993-94シーズン、チームは「呪い」を打ち破る快挙を成し遂げます。エドモントン・オイラーズの黄金期を支えたマーク・メシエを筆頭に、アダム・グレイヴス、ブライアン・リーチ、ルーキーのセルゲイ・ズボフといった攻守の要が揃いました。グレイヴスはこのシーズン、チーム記録を更新する52ゴールを挙げました。
レギュラーシーズンで再び会長賞を獲得したレンジャースは、プレーオフで宿敵ニューヨーク・アイランダース、ワシントン・キャピタルズを破り、カンファレンス決勝でニュージャージー・デビルスと対戦しました。レギュラーシーズンではデビルスに全勝していましたが、このシリーズは第7戦までもつれる激戦となりました。特に、劣勢に立たされた第6戦では、キャプテンのマーク・メシエが勝利を宣言し、歴史に残る第3ピリオドでのハットトリックによってチームを勝利に導きました。そして運命の第7戦、延長戦にもつれ込んだ末、ステファン・マテューの決勝ゴールによって激闘を制し、スタンレー・カップ決勝進出を果たしました。
決勝の相手は、パベル・ブレを擁するバンクーバー・カナックスでした。レンジャースはシリーズを3勝1敗とリードしながらも、カナックスの粘りによって第7戦まで持ち込まれました。しかし、マディソン・スクエア・ガーデンでの最終戦で、リーチ、グレイヴス、メシエの得点により3対2で勝利。実に54年ぶりとなるスタンレー・カップ優勝を達成しました。ブライアン・リーチはアメリカ人として初のコーン・スマイス賞（プレーオフMVP）を受賞し、マーク・メシエはレンジャースのキャプテンとして、待ち望まれたカップをホームにもたらしました。
1994年の優勝後、レンジャースはウェイン・グレツキーなど大物選手の獲得を試みましたが、再び頂点に立つことはできませんでした。1990年代後半にはチーム力の低下が見られ、1998年にはプレーオフ進出も逃しました。2000年代初頭には、セオレン・フルーリー、エリック・リンドロス、パベル・ブレといったスター選手を多額の年俸で獲得しましたが、チーム成績には結びつかず、2003年、2004年と続けてプレーオフ進出を逃すという低迷期を迎えました。
2005年以降は、ヤロミール・ヤーガーを中心にチームの再建が進められ、多くのチェコ人選手や、後にチームの顔となるスウェーデン人ゴーリー、ヘンリク・ランドクヴィストを獲得しました。チームはヤーガーの活躍で成績を向上させますが、プレーオフでは早期敗退が続きました。2012年には1994年以来の地区優勝を果たし、カンファレンス決勝まで進出しましたが、ニュージャージー・デビルスに敗れました。2014年には再びスタンレー・カップ決勝に進出しましたが、ロサンゼルス・キングスに敗れ、20年ぶりの優勝は叶いませんでした。
ニューヨーク・レンジャースは、NHLの歴史において重要な位置を占めるチームであり、その波乱に満ちた歴史は今も多くのファンを魅了し続けています。
創成期の栄光と苦難
チームは1926年、テックス・リカード氏によってNHLの意向を受け創設されました。当初は彼の名にちなんで「テックス・レンジャース」とも呼ばれ、そのニックネームが定着しました。テックス・リカードは、コーチのレスター・パトリックを含むチームの体制を刷新し、トロント・メープルリーフスの名コーチとなるコーン・スマイスらを獲得するなど、勝利を目指すチーム作りを進めました。設立初年度から好成績を収め、アメリカン・ディビジョンを首位で終えましたが、プレーオフでボストン・ブルーインズに敗れました。
しかし、わずか設立2年目の1928年には、スタンレー・カップ優勝という快挙を達成します。決勝ではモントリオール・マルーンズを破りましたが、このシリーズ第2戦では、ゴーリーのローン・チャボットが負傷した際に、コーチのレスター・パトリック自らが代役としてゴールを守るという前代未聞の出来事がありました。1929年には再び決勝に進出するも敗退し、1930年代初頭は成績が安定しない時期が続きました。1933年には、ビル・クック、バン・クックのクック兄弟と、センターのフランク・バウチャーらの活躍により、トロント・メープルリーフスを下して2度目のカップを獲得しました。その後も勝率5割前後の成績が続き、1940年にはフランク・バウチャーがコーチに就任した年に、メープルリーフスを破り3度目のスタンレー・カップ優勝を果たしました。
1940年代半ばにはチームは極度の低迷期を迎え、中には0対15といった大敗を喫する試合もありました。1948年には5年連続でプレーオフ進出を逃した後、奇跡的に決勝まで進出しましたが、翌1949年は再び早期敗退しました。1950年には、ホームアリーナであるマディソン・スクエア・ガーデンでサーカスの興行が行われたため、レギュラーシーズンの主催試合全てをトロントで代替開催するという異例の事態となりました。この年、レンジャースは決勝まで勝ち進みましたが、デトロイト・レッドウィングスとの第7戦延長戦で惜敗しました。
オリジナルシックス時代以降の変遷
その後20年以上にわたり、チームは低迷期が続きましたが、1960年代後半には若い力が台頭し始め、1967年には新たなマディソン・スクエア・ガーデンへ本拠地を移転しました。新人ゴーリーのエディ・ジャコミンらの活躍もあり、チームは5年ぶりにプレーオフへ復帰しました。1972年には、チーム最多得点を挙げていたジャン・ラットルを欠きながらもスタンレー・カップ決勝に進出しますが、ボストン・ブルーインズに敗れました。ブラッド・パーク、ヴィク・ハドフィールド、ロッド・ギルバートといった有力選手たちの活躍により、その後もプレーオフ常連となりました。1970年代後半には、ブルーインズからフィル・エスポジトを獲得するなど戦力強化を図り、1979年には再びカップ決勝に進出しますが、モントリオール・カナディアンズに敗れ優勝には至りませんでした。
1980年代から1990年代にかけて、レンジャースはほぼ毎年プレーオフに進出する安定した強さを見せましたが、スタンレー・カップにはなかなか手が届きませんでした。特に1985-86シーズンには、新人ゴーリーのジョン・バンビーズブルックの活躍でカンファレンス決勝まで進出しましたが、カナディアンズに敗退しました。
「1940年の呪い」と1994年の歓喜
この多くのプレーオフでの苦い経験は、ファンの間で「1940年の呪い」というジンクスを生み出しました。これは1940年の優勝後、チーム首脳陣が優勝カップを使ってある行為を行ったことから始まったという伝説です。この「呪い」は、1991-92シーズンに会長賞（レギュラーシーズン最高成績）を獲得しながらも、プレーオフでピッツバーグ・ペンギンズに逆転負けした際にファンの間で広く語られました。
しかし、1993-94シーズン、チームは「呪い」を打ち破る快挙を成し遂げます。エドモントン・オイラーズの黄金期を支えたマーク・メシエを筆頭に、アダム・グレイヴス、ブライアン・リーチ、ルーキーのセルゲイ・ズボフといった攻守の要が揃いました。グレイヴスはこのシーズン、チーム記録を更新する52ゴールを挙げました。
レギュラーシーズンで再び会長賞を獲得したレンジャースは、プレーオフで宿敵ニューヨーク・アイランダース、ワシントン・キャピタルズを破り、カンファレンス決勝でニュージャージー・デビルスと対戦しました。レギュラーシーズンではデビルスに全勝していましたが、このシリーズは第7戦までもつれる激戦となりました。特に、劣勢に立たされた第6戦では、キャプテンのマーク・メシエが勝利を宣言し、歴史に残る第3ピリオドでのハットトリックによってチームを勝利に導きました。そして運命の第7戦、延長戦にもつれ込んだ末、ステファン・マテューの決勝ゴールによって激闘を制し、スタンレー・カップ決勝進出を果たしました。
決勝の相手は、パベル・ブレを擁するバンクーバー・カナックスでした。レンジャースはシリーズを3勝1敗とリードしながらも、カナックスの粘りによって第7戦まで持ち込まれました。しかし、マディソン・スクエア・ガーデンでの最終戦で、リーチ、グレイヴス、メシエの得点により3対2で勝利。実に54年ぶりとなるスタンレー・カップ優勝を達成しました。ブライアン・リーチはアメリカ人として初のコーン・スマイス賞（プレーオフMVP）を受賞し、マーク・メシエはレンジャースのキャプテンとして、待ち望まれたカップをホームにもたらしました。
近年の動向
1994年の優勝後、レンジャースはウェイン・グレツキーなど大物選手の獲得を試みましたが、再び頂点に立つことはできませんでした。1990年代後半にはチーム力の低下が見られ、1998年にはプレーオフ進出も逃しました。2000年代初頭には、セオレン・フルーリー、エリック・リンドロス、パベル・ブレといったスター選手を多額の年俸で獲得しましたが、チーム成績には結びつかず、2003年、2004年と続けてプレーオフ進出を逃すという低迷期を迎えました。
2005年以降は、ヤロミール・ヤーガーを中心にチームの再建が進められ、多くのチェコ人選手や、後にチームの顔となるスウェーデン人ゴーリー、ヘンリク・ランドクヴィストを獲得しました。チームはヤーガーの活躍で成績を向上させますが、プレーオフでは早期敗退が続きました。2012年には1994年以来の地区優勝を果たし、カンファレンス決勝まで進出しましたが、ニュージャージー・デビルスに敗れました。2014年には再びスタンレー・カップ決勝に進出しましたが、ロサンゼルス・キングスに敗れ、20年ぶりの優勝は叶いませんでした。
ニューヨーク・レンジャースは、NHLの歴史において重要な位置を占めるチームであり、その波乱に満ちた歴史は今も多くのファンを魅了し続けています。
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