ウィラント

ウィラント：インドネシア政治の変遷と軍事の要

ウィラント（Wiranto）は、1947年4月4日生まれのインドネシアの政治家、元軍人です。彼は、インドネシア現代史において重要な役割を果たし、数々の要職を歴任しました。

生い立ちと軍歴

ジョクジャカルタで生まれたウィラントは、幼少期に家族とともに戦火を避けて疎開しました。当初は建築家を志望していましたが、経済的な理由からインドネシア陸軍士官学校に進学しました。1968年に卒業後、北スラウェシ州での勤務を皮切りに、着実に軍歴を重ねていきました。小隊長から大隊長へと昇進し、軍司令部勤務を経て、陸軍戦略予備軍の参謀長、そしてジャカルタ地域軍司令官へとキャリアを積み上げました。

スハルト政権末期からハビビ政権へ

1997年、ウィラントはインドネシア陸軍参謀長に任命されました。しかし、翌1998年にはアジア通貨危機の影響でスハルト政権が揺らぎ始めます。スハルトは7期目の大統領に再選されたものの、国民の反発は強まりました。新内閣において、ウィラントは国防・治安大臣に指名されます。

スハルト辞任後、ユスフ・ハビビが大統領に就任すると、ウィラントは引き続きインドネシア国軍司令官兼国防・治安大臣を務めました。しかし、この時期には、1997年から98年にかけて発生した活動家誘拐事件へのコパススの関与が明らかになり、ウィラントもその責任を問われることになります。また、国民協議会に反対するデモ参加者を弾圧した際には、多数の死傷者が出ました。

東ティモール独立問題とウィラントの関与

ウィラントはインドネシア国軍司令官として、東ティモールが独立を決議した際の撤退にも関与しました。しかし、この過程で、東ティモールからの撤退時にインドネシア国軍兵士が犯した人権侵害の背後にいた、あるいは少なくとも容認していたとして非難されるようになりました。

その後の政治活動

1999年、ウィラントは国会議員総会の警備を担当しましたが、その後、政治に関与するようになります。ハビビ政権下で副大統領候補となりましたが、最終的には辞退しました。アブドゥルラフマン・ワヒドが大統領に就任すると、政治・治安担当調整大臣として入閣しましたが、ワヒドとの対立により、間もなく閣僚を外れることになりました。

2004年にはゴルカルの大統領候補として大統領選に出馬しましたが、落選しました。その後、ハヌラ党を結成し、初代党首に就任しました。2009年の大統領選挙にも副大統領候補として出馬しましたが、再び落選しています。

ジョコ・ウィドド政権での再登板と襲撃事件

2016年、ジョコ・ウィドド大統領によって政治・法務・治安担当調整大臣に任命され、再び政権の中枢に返り咲きました。しかし、2019年10月には、イスラム国に関連する過激派組織のメンバーとみられる男に襲撃され、重傷を負いました。一命を取り留めたものの、長期間の治療を余儀なくされました。

大統領諮問会議議長へ

ナイフによる襲撃からの回復後、2019年12月には第5代大統領諮問会議議長に任命されました。この役職に就任するために、ウィラントはハヌラ党を離党しています。

ウィラントは、インドネシアの激動の時代を生き抜き、軍と政治の両面で大きな影響力を持った人物です。しかし、その経歴は数々の論争に彩られており、その評価は分かれています。

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