ウィリアム・マーシャル (第2代ペンブルック伯)

第2代ペンブルック伯ウィリアム・マーシャルの生涯

第2代ペンブルック伯ウィリアム・マーシャル（1190年 - 1231年）は、中世イングランドにおいて重要な役割を果たした貴族です。彼は初代ペンブルック伯ウィリアム・マーシャルとイザベル・ド・クレアの長男として生まれました。以下では、彼の父を「父ウィリアム」と表記します。

若年期と人質時代

ウィリアムは1190年頃にノルマンディーで誕生したと考えられています。1205年、父ウィリアムがフランス王フィリップ2世に臣下の礼を取ることを余儀なくされた際、ウィリアムは人質としてイングランド王ジョンに預けられました。彼は1205年から1212年まで、父の忠誠を保証する人質としてジョンの宮廷で過ごしました。この時期は、彼の人生において重要な経験となったでしょう。

1214年には、父の友人であるボードゥアン・ド・ベテューヌの娘アリス・ド・ベテューヌと結婚しましたが、翌1215年にアリスは原因不明の死を遂げました。結婚生活は短く、彼の人生に影を落とした出来事でした。

バロン戦争と父との対立

1215年の第一次バロン戦争では、ウィリアムは造反諸侯側に、父ウィリアムは国王ジョン側に分かれて戦いました。これは、父子の間での政治的立場の違いを示す出来事です。1216年、フランスのルイ王太子（後のルイ8世）がウスター城を攻略した際、ウィリアムは父に撤退を勧告し、父はチェスター伯ラヌルフが城を奪還する直前に撤退しています。また、1217年のリンカーンの戦いでも、父子は敵味方に分かれて戦うこととなりました。この時期、彼は父とは異なる政治的な立場を貫き、独自の道を歩んだと言えるでしょう。

ペンブルック伯としての活躍

1219年に父ウィリアムが亡くなると、ウィリアムはペンブルック伯とアール・マーシャルの称号を継承しました。これらの称号は父の偉大な業績と結びついており、ウィリアムはイングランドで最も影響力のある貴族の一人となりました。1224年には、ジョンとイザベラ・オブ・アングレームの末娘でヘンリー3世の妹であるエリナーと結婚し、プランタジネット王家との関係をさらに強固なものとしました。

1223年、ウェールズ大公ルウェリン・アプ・ヨーワースがペンブルックにあるウィリアムの領地を攻撃すると、彼はルウェリンに対抗するためにアイルランドへ移動しました。作戦は成功したものの、この行動は若きヘンリー3世の摂政から独立の動きと見なされました。さらに1224年には、アイルランドにあるウィリアムとヘンリー3世の領地がヒュー・ド・レイシーに攻撃されたため、ウィリアムはアイルランド最高法官に任命され、ヒュー・ド・レイシーを撃破しました。1225年にはキルケニーにドミニコ会の小修道院を設立し、カーディガンとカマーゼンに城を建設し始めました。これらの業績から、彼が単なる貴族ではなく、軍事的にも政治的にも優れた能力を持っていたことがわかります。

1226年、ウィリアムはルウェリンから奪ったカーディガンとカマーゼンの王城を引き渡すよう命じられました。また、同年には高等法院長官の職を辞し、コノートへの対外作戦の間、彼に敵対するオニール・オコナーへの対応に当たりました。1230年には、国王と共にブルターニュへ遠征し、王がイングランドに帰国する際には軍の指揮を任されました。これらの出来事は、彼が国王からも信頼されていたことを示しています。

死と遺産

1231年2月にイングランドに帰還したウィリアムは、妹イザベルとコーンウォール伯リチャードとの結婚を手配しました。しかし、その2ヵ月後の4月6日に亡くなりました。彼は子供がおらず、ペンブルック伯の称号は弟リチャードが継承しました。未亡人となったエリナーは、1238年にレスター伯シモン・ド・モンフォールと再婚しました。

ウィリアムは、生前に父についての伝記『ウィリアム・マーシャルの生涯』の作成を委託していました。彼の死後、彼はロンドンのテンプル教会で父の隣に埋葬され、現在でも彼の彫像を見ることができます。

ウィリアム・マーシャルは、父の偉大な遺産を受け継ぎ、激動の時代を生き抜いた傑出した貴族でした。彼は、その生涯を通じて多くの戦いに参加し、政治的な手腕を発揮しました。彼の功績は、中世イングランドの歴史において重要な一部となっています。

参考文献

* Smith, Brendan (2007). Oxford Companion to Irish History. Oxford: Oxford University Press. ISBN 9780199234837

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