ウィルフレド・バスケス

ウィルフレド・バスケス・オリベラは、1960年8月2日にプエルトリコで生まれた元プロボクサーです。彼はボクシング史においても特筆すべき功績を残しており、世界ボクシング協会（WBA）の下でバンタム級、スーパーバンタム級、フェザー級という異なる三つの階級で世界王座を獲得し、同一団体での3階級制覇という歴史的な偉業を達成しました。

バスケスがボクシングのキャリアをスタートさせたのは18歳の時でした。プロのリングに初めて上がったのは1981年1月29日ですが、このデビュー戦は4回判定での敗北となりました。しかし、彼は着実にキャリアを積み重ね、1984年3月17日にはプエルトリコ国内のバンタム級王座を獲得しています。

世界タイトルへの最初の挑戦は1986年2月8日。WBC世界バンタム級チャンピオンだったミゲール・ロラに挑みましたが、12ラウンドに及ぶ戦いの末、判定で敗れ、惜しくも王座獲得はなりませんでした。しかし、彼は諦めませんでした。

二度目の世界挑戦となった1987年10月4日、敵地韓国でWBA世界バンタム級王者・朴讃栄と対戦。この試合で10回TKO勝利を収め、プロ31戦目にして念願の世界チャンピオンの座を手に入れました。初防衛戦では、朴の前王者である日本の六車卓也を相手に激戦を繰り広げましたが、フルラウンドを戦い抜き、三者三様の引き分けという結果で辛くもベルトを守ることに成功しました。この六車戦以降、日本のジムに所属する選手の世界挑戦が連続して失敗するという記録が生まれることとなります。

二度目の防衛戦は1988年5月9日、強敵カオコー・ギャラクシー（後に史上初の双子世界王者の一人となる）と対戦しました。この試合も最終ラウンドまでもつれ込む激しい戦いとなりましたが、1-2の僅差の判定で敗れ、バンタム級王座から陥落しました。

しばらく世界タイトルから遠ざかりますが、1990年9月10日にはマイナー団体であるIBCのスーパーバンタム級王座決定戦に出場し、ジョー・オレワを最終ラウンドの12回TKOで破り、王座を獲得しました。

そして1992年3月27日、バスケスはWBA世界スーパーバンタム級王者ラウル・ペレスに挑みます。この試合ではわずか3回でTKO勝利を収め、見事にWBAでの2階級制覇を達成しました。このスーパーバンタム級王座は長期にわたって保持し、日本人選手の横田広明（12回判定勝利）、葛西裕一（初回KO勝利）を含む9度の防衛に成功しました。また、IBFバンタム級で16度も防衛していたオルランド・カニザレスからの挑戦も退け、12回判定で勝利しています。

10度目の防衛戦は、自身にとって初めての母国での世界戦となりましたが、アントニオ・セルメニョとの一戦で僅差の12回判定負けを喫し、王座を失いました。

スーパーバンタム級王座陥落後、バスケスはフェザー級へ階級を上げ、1995年12月9日にはWBAラテンアメリカフェザー級王座を獲得しています。

そして1996年5月18日、WBA世界フェザー級チャンピオンのエロイ・ロハスに挑戦。11回TKOで勝利し、WBA同一団体での3階級制覇という快挙を達成しました。このフェザー級王座でも日本人選手である渡辺雄二を5回TKOで破るなど、通算4度の防衛に成功しました。しかし、当時WBO世界フェザー級王者だったナジーム・ハメドとのビッグマッチが決定したことに伴い、1998年3月にWBA王座を剥奪されることとなります。

ハメドとの一戦は1998年4月18日に行われましたが、7回TKOで敗れ、4階級制覇はなりませんでした。その後、1999年は試合を行わず、2000年にはNABF北米ライト級王座決定戦に出場しましたが、ファン・ラスカノに敗れています。2001年もリングから遠ざかり、2002年に4試合を行ったのを最後に現役を引退しました。

バスケスの故郷であるバヤモン市では、彼の功績を称え、「ウィルフレド・バスケス・インターナショナル・マラソン」が1988年から開催されています。また、彼の息子であるウィルフレド・バスケス・ジュニアもプロボクサーとなり、WBO世界スーパーバンタム級王者になるなど、親子二代にわたる世界王者としても知られています。

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