ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏

ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏

『ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏』（原題: Waiting for the Barbarians）は、2019年に公開されたイタリア・アメリカ合衆国のドラマ映画である。本作は、著名な作家J・M・クッツェーの小説『夷狄を待ちながら』を原作にしており、自ら脚本も手掛けたクッツェーが映画化に深く関与している。監督はシーロ・ゲーラが務め、キャストにはマーク・ライランス、ジョニー・デップ、ロバート・パティンソンといった実力派俳優たちが名を連ねている。

ストーリー概要

物語は、帝国の辺境にある小さな町が舞台となっている。平穏な日常が続く中、民政官が町民たちの生活を支えていたが、ある日、中央から派遣されたジョル大佐が「蛮族が攻めてくる」という噂を信じ込み、町民に対する過酷な弾圧を始める。無実の人々を次々と捕らえ、拷問を加える大佐の行動に、民政官は心を痛めながらも、彼の行動を止めることができない。

そんな折、民政官は両足を骨折した少女に出会う。彼女の話によれば、父親が不当に殺され、自身も惨たらしい目に遭ったという。少女の悲劇を知った民政官は、彼女を守ることを決意し、元の部族に送り届ける。しかし、それが密通行為と見なされ、彼自身も投獄されてしまう。大佐の側近であるマンデル准尉からは激しい拷問を受け、苦痛の日々が始まる。

物語は、ジョル大佐の部隊が蛮族と戦うために出発した夏から秋へと移ろい、町の状況が一変していく。大佐の隊は消息を絶ち、町民は次々と逃げ去る中、民政官は囚人であるにもかかわらず比較的自由に町を歩き回ることが許される。

ある日、殺害された兵士の遺体が砂漠から帰ってくることで、マンデル准尉を含む兵士たちは恐怖を抱き、町から逃げ出す。しばらくして、大佐とわずかな兵士たちが戦場から戻ってくるが、すでに町は人が去り、彼らは逃げ出したことを知る。町には僅かに残った住民と民政官だけが取り残され、遠くに迫る蛮族の影が見える。「ウェイティング・バーバリアンズ」は、その結末を描かないまま物語を終える。

キャスト

本作には、以下のような豪華キャストが出演している。

• - 民政官: マーク・ライランス（吹替: 西垣俊作）
• - ジョル大佐: ジョニー・デップ（吹替: 平田広明）
• - マンデル准尉: ロバート・パティンソン（吹替: 須嵜成幸）
• - 少女: ガーナ・バヤルサイハン（吹替: 真壁かずみ）
• - その他、グレタ・スカッキやデヴィッド・デンシックなども出演。

製作背景

この映画の製作は、2016年から始まった。シーロ・ゲーラが監督として起用され、マーク・ライランスが主演を務めることが決まる。その後、2018年にはジョニー・デップとロバート・パティンソンの参加が発表された。主要撮影はモロッコで行われ、2019年には映画祭での上映が行われ、観客の注目を集めた。

評価と反響

映画の評価は賛否が分かれた。批評サイトRotten Tomatoesでは、90件のレビューが寄せられ、53%の支持率を記録。Metacriticでは約52点という評価が示され、観客にとっては期待外れの作品とされた。批評家たちは、テーマの深さや演技力には触れるものの、総じて満足感には欠けるとの意見が多い。

結論

『ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏』は、権力の乱用と人間の苦悩を描いた作品として、様々な思索を提供する映画でありながら、その完成度には疑問が残るという印象を与える作品となった。

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