ウェストランド ライサンダー

ウェストランド・ライサンダー：大戦を駆け抜けた多様な任務機

ウェストランド・ライサンダーは、第二次世界大戦中にイギリスのウエストランド社が開発した軍用機です。その名は、古代ギリシャのスパルタの将軍に由来しています。この機体は、当初、地上部隊の支援を目的とした近接支援機として設計されました。

1936年の初飛行以降、1938年にはイギリス空軍に配備され、大戦勃発と同時にフランスへと送られました。しかし、低速であるという欠点を持ち、ドイツ軍の猛攻の前に多くの損失を出しました。それでもなお、偵察、着弾観測、物資輸送など、様々な任務で活躍し、特にダンケルク撤退作戦ではその性能を発揮しました。時には、予想外の空中戦でドイツ軍のHeinkel He 111を撃墜した記録も残っています。

イギリス本土への撤退後、ライサンダーの真価が発揮されます。その卓越した短距離離着陸能力（STOL）を活かし、連絡機として運用されるようになったのです。特に、特殊任務部隊において、フランスを始めとする各地のレジスタンスへの物資供給、スパイの潜入・脱出などに大きく貢献しました。

1941年には、秘密工作員の輸送を専門とするMk.III型が開発されました。これはエンジン換装に加え、増槽の搭載により航続距離が大幅に向上した点が特徴です。この改良型は、特殊任務部隊での活躍を通して、数々の作戦を成功に導きました。400回以上の任務遂行、800名以上の連絡員の輸送という驚異的な実績を残したとされています。

ライサンダーの生産数は、全型合わせて1,786機に上ります。その設計は、高翼単葉機で、主翼前縁に可動スラットを備えていました。金属骨組みと羽布張りの胴体、全面ガラス張りのキャノピーを持つコクピットは、優れた視界をパイロットに提供しました。武装は機銃4挺に加え、必要に応じて爆弾を搭載することも可能でした。単発エンジンと3枚羽根のプロペラを搭載し、優れた機動性と実用性を両立していました。

ライサンダーのスペック (Mk.IIIA)

ライサンダーのバリエーション

ライサンダーは、Mk.1からMk.3、さらに特殊作戦仕様のMk.3 SCW、標的曳航機に改造されたTT型など、数々のバリエーションが存在します。これらは、エンジンや武装、搭載機器などの違いによって識別されました。

映画への登場

映画『マリアンヌ』(原題：Allied)では、レジスタンス支援任務に就くライサンダーが登場します。CGによる再現に加え、俳優が搭乗するシーンも存在し、そのために実物大のレプリカが制作されました。

ライサンダーは、その多様な任務遂行能力と高い実用性によって、第二次世界大戦において重要な役割を果たした航空機と言えるでしょう。その活躍は、歴史に刻まれただけでなく、現代においても人々の記憶に生き続けています。

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