ウェーサーカ祭

ウェーサーカ祭について

ウェーサーカ祭は、仏教世界で広く行われる年に一度の重要な祭事です。地域によってウエサク、ウエサカ、あるいはVesakなど、様々な名称で呼ばれています。この祭りは、特にスリランカ、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアといった東南アジア諸国や、香港、台湾などで盛大に祝われます。一方で、日本や中国、韓国など、大乗仏教（北伝仏教）が伝わった東アジアにおいては、ウェーサーカ祭とは別に灌仏会（かんぶつえ）が行われるのが一般的です。

名称と開催時期の由来

「ウェーサーカ」という名称は、サンスクリット語でインド暦の第二月を指すVaiśākhaに由来すると考えられています。ミャンマーでは、この祭りを「満月祭」を意味するKa-sone-la-pyaeと呼び、これはミャンマー独自の暦で2月にあたります。

ウェーサーカ祭の具体的な開催日は、地域や宗派が採用する暦によって異なります。上座部仏教では、仏滅紀元を基準とし、その年のUposatha（布薩日）の中でも特に重要な満月の日に実施されます。これは、グレゴリオ暦では概ね5月または6月頃にあたることが多いようです。中国では、旧暦の4月最初の満月の日がこれに当たるとされています。グレゴリオ暦で見ると、例年4月から5月にかけての日程となりますが、正確な日は年によって変動します。

釈迦の三大仏事とウェーサーカ祭

ウェーサーカ祭が「釈迦の誕生日」と通称されることがありますが、これはこの祭りが単に誕生を祝うだけでなく、仏教の開祖である釈迦牟尼の誕生、悟り（ニルヴァーナ、涅槃）、そして入滅（パリニルヴァーナ、般涅槃）という、生涯における三大仏事を同時に記念する特別な日であるためです。南伝仏教においては、これら三つの出来事が同じ月の同じ日に起こったと伝えられています。これに対し、日本の仏教においては、降誕会（誕生日）、成道会（悟りを開いた日）、涅槃会（入滅の日）はそれぞれ別の日に分けて行われる習慣があります。

国際連合による「ウェーサクの日」

国際連合は、世界の主要な宗教の祝祭の中から、国際的に認知されるべきものを選定しており、仏教のウェーサーカ祭は1999年にその一つとして公式に認定されました。これを受けて、国際的な仏教関連団体が中心となり、ウェーサーカ祭を祝う大規模な国際イベントを開催するようになりました。このイベントは日本語で「国連ウェーサクの日祝祭」と表記されることもあります。

この国際的な祝祭は、当初タイの仏教界が主導し、世界中の仏教徒に広く参加を呼びかける形で始まりました。開催地については、仏教国の間で持ち回りが検討され、2008年には試験的にベトナムで開催されました。しかし、当時のベトナムにおける宗教事情から、参加した僧侶たちの間に戸惑いや反発が生じる事態となりました。このため、非公式ながらタイで改めて祝祭が行われることになり、翌年以降に内定していた中国での開催計画も白紙に戻されました。最終的に、国際的なウェーサクの日の祝祭は、タイで永続的に開催される方向で落ち着くことになりました。2010年には、タイでの開催ながら日本の仏教界も共同主催者として名を連ねています。

各国におけるウェーサーカ祭の呼び方

ウェーサーカ祭は、各国や地域で様々な言語や表記で親しまれています。以下はその一例です。

英語: Vesak
タイ語: วิสาขบูชา (Wisakhabucha)
中国語: 佛誕、衛塞節 など
韓国語: 석가 탄신일 (釈迦誕辰日)、부처님오신날
インドネシア語: Hari Waisak
マレー語: Hari Wesak
ミャンマー語: ကဆုန်လပြည့် ဗုဒ္ဓနေ့ (Kasonelapyany Buddhanae)
スリランカ（シンハラ語）: වෙසක් (Vesak)
ベトナム語: Lễ Phật Đản（禮佛誕）
ヒンディー語: बुद्ध पूर्णिमा (Buddha Pūrṇimā)

日本の「花祭り」（灌仏会）

日本で行われる仏教の祭りで、釈迦の誕生を祝うものは灌仏会（かんぶつえ）と呼ばれ、一般的には花祭りの名で広く知られています。その他にも、降誕会、仏生会、浴仏会、龍華会、花会式といった別称があります。日本の花祭りは国民の休日には指定されていません。

花祭りでは、釈迦が誕生した際に、空から龍が現れて甘露（ソーマ）を注いだとされる故事にちなみ、誕生仏に甘茶をかける「灌仏」の儀式が行われます。もともと中国の旧暦4月8日に行われていましたが、明治政府がグレゴリオ暦（新暦）を採用した際に、日付をそのまま新暦に移行したため、現在では旧暦より約1ヶ月早い新暦4月8日に祝われることになっています。

日本全体で行われる行事ですが、地域によっては特別な取り組みも見られます。例えば、愛知県では、愛知県ウエサカ鑽仰会が「ウエサカ祭」という名称のイベントを主催しています。県内の仏教系高等学校に通う生徒たちが、名古屋市にある覚王山日泰寺に集い、釈迦の遺徳を称える催しが行われています。

このように、ウェーサーカ祭は仏教圏全体で釈迦の生涯を記念する重要な日でありながら、地域や歴史、文化によって様々な形で受け継がれ、祝われています。

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