ウォルター・ピストン

ウォルター・ピストン：アメリカ音楽界の巨匠

ウォルター・ピストン（Walter Piston, 1894年1月20日 - 1976年11月12日）は、20世紀アメリカを代表する作曲家であり、卓越した音楽教師としてもその名を刻んでいます。彼の音楽は、新古典主義的な明晰さと、アメリカ独自の音楽語法を融合させたもので、後進の作曲家たちに多大な影響を与えました。

生涯

ピストンはメイン州ロックランドで生まれました。彼の祖父はイタリアのジェノヴァ出身の航海士で、アメリカへの移住を機に英語風の姓に改名しています。幼い頃から音楽に親しみ、ボストンの工業高校でエンジニア教育を受ける傍ら、芸術への志を抱き始めます。マサチューセッツ芸術大学では美術、建築デザイン、アメリカ史を学び、音楽の基礎を築きました。また、この頃に後の妻となるキャスリン・ネイソンと出会っています。

1920年、ピストンはハーバード大学に進学し、本格的に音楽を学び始めます。アーチボルド・デイヴィソンに対位法を、クリフォード・ヘイルマンにカノンとフーガを、エドワード・バーリンガム・ヒルに作曲と音楽史を師事しました。大学では助手として教鞭を執り、学生オーケストラを指揮する傍ら、海軍軍楽隊にも参加し、様々な楽器の演奏技術を磨きました。

ハーバード大学卒業後、ピストンはジョン・ノウルズ・ペイン記念研究旅行奨学金を得て、フランス・パリに留学します。エコールノルマル音楽院でヴァイオリンをジョルジュ・エネスコに、作曲をポール・デュカスとナディア・ブーランジェに師事し、作曲家としての才能を開花させました。1925年には、ヨーロッパで作曲された《フルート、クラリネット、ファゴットのための3つの小品》が出版され、作曲家としての第一歩を踏み出しました。

帰国後、ピストンは母校ハーバード大学で教鞭を執り、サミュエル・アドラー、レナード・バーンスタイン、エリオット・カーターなど、数多くの著名な作曲家を育成しました。教育者としての才能も高く評価され、多くの学生から慕われました。

1936年には、CBSの委嘱により、アーロン・コープランドらと共にラジオ放送向けの新作を手がけ、《ピアノと室内オーケストラのための小協奏曲》を作曲しました。1937年には、《交響曲 第1番》がボストン交響楽団により初演され、作曲家としての名声を確立しました。また、指揮者アーサー・フィードラーの依頼で作曲したバレエ音楽≪不思議な笛吹き≫は、彼の代表作として広く親しまれています。

ピストンの作品は、その卓越した構成力と洗練されたオーケストレーションで知られています。彼は、新古典主義音楽の影響を受けながらも、ジャズやアメリカ民謡の要素を取り入れ、独自の音楽語法を確立しました。彼の音楽は、知的でありながらも、どこかユーモラスで親しみやすい魅力を持っています。

主な受賞歴と晩年

ピストンは、1944年に《交響曲 第2番》でニューヨーク音楽評論家サークル賞、1948年に《交響曲 第3番》で、1960年に《交響曲 第7番》でピューリッツァー賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。また、著作活動も積極的に行い、『対位法』『管弦楽法』『和声論』などの音楽理論書は、今日でも多くの音楽家に愛読されています。

晩年は糖尿病により視覚と聴覚を患いながらも、作曲活動を続けました。1976年、妻キャスリンの死後、心臓発作によりマサチューセッツ州ベルモントの自宅で生涯を閉じました。彼の遺灰は、マウント・オーバーン墓地に埋葬されています。

ウォルター・ピストンは、アメリカ音楽界に多大な貢献をした作曲家として、その名は永く語り継がれることでしょう。

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