ウォーム・ユア・ハート

1991年、独特のファルセットと豊かな歌声で知られるアメリカのシンガー、アーロン・ネヴィルは、所属するネヴィル・ブラザーズとの活動と並行して、A&Mレコードとのソロ契約を通じて自身の名を冠したアルバム『ウォーム・ユア・ハート』（Warm Your Heart）を世に送り出しました。

本作の制作において、ネヴィルのキャリアにおいて重要な役割を果たしてきた人物、リンダ・ロンシュタットが深く関わっています。彼女はアルバム全体のプロデュース、アレンジ、そしてボーカルで多岐にわたる貢献を見せました。特に、本作のリリースに先立つ1989年に、ネヴィルとのデュエット曲「ドント・ノウ・マッチ」でグラミー賞を受賞し、世界的な大ヒットを記録していたこともあり、彼女との再タッグは大きな注目を集めました。

アルバムには、ロンシュタット自身がデュエットで参加した情緒豊かな楽曲「クローズ・ユア・アイズ」や、リタ・クーリッジとの情感あふれるハーモニーが聴ける「ラ・ヴィ・ダンサンテ」など、印象的なコラボレーションが収録されています。さらに、ドクター・ジョン、ライ・クーダー、ラリー・カールトンといった音楽界の重鎮から、セッションシーンで名高いミュージシャンまで、非常に豪華な顔ぶれが参加しており、アーロン・ネヴィルの唯一無二のボーカルを引き立てる多彩で深みのあるサウンドを創り出しています。ランディ・ニューマン、ジョン・ハイアット、アラン・トゥーサンといった名ソングライターによる楽曲や、バート・バカラック、フランツ・シューベルトといった幅広い時代の作品を取り上げることで、アルバムはジャンルを超えた豊かな音楽性を示しています。

『ウォーム・ユア・ハート』は商業的にも目覚ましい成功を収めました。ネヴィルの母国アメリカでは、主要なアルバムチャートであるBillboard 200で最高44位にランクインし、R&Bアルバムチャートでも62位を獲得しています。その売上は着実に伸び続け、リリース翌年の1992年1月にはRIAAによってゴールドディスクに公認され、さらに1997年8月にはプラチナディスクへと認定されるという息の長いヒットとなりました。海外では、特にニュージーランドで絶大な人気を博し、アルバムチャートで3週連続の1位を記録。合計9週間にわたりトップ10圏内に留まり続けるという大成功を収めました。また、本作からシングルカットされた「エヴリバディ・プレイズ・ザ・フール」は、Billboard Hot 100で8位、アダルト・コンテンポラリー・チャートでは見事1位に輝くという特大のヒットを飛ばし、アルバムの成功をさらに後押ししました。

収録曲の中でも、特に「アヴェ・マリア」はアルバムリリース後も多くの場所で聴かれる機会を得ました。1993年にはアメリカ映画『生きてこそ』のサウンドトラックに採用されたほか、日本では2000年から2002年にかけて、日産・ブルーバードシルフィのテレビコマーシャルに使用され、その美しい旋律とネヴィルの清らかな歌声が広く知られることとなりました。

本作のサウンドを支えたのは、アーロン・ネヴィル自身のボーカル、カウベル、パレードドラムに加え、前述のリンダ・ロンシュタットやリタ・クーリッジによるデュエット・ボーカルやバッキング・ボーカルです。ブライアン・ストルツ、ドン・グロルニック、トニー・ホール、カルロス・ヴェガといったレギュラー陣に加え、ギターにはデヴィッド・リンドレー、ライ・クーダー、ディーン・パークス、ラリー・カールトン、鍵盤楽器にはロビー・ブキャナン、ドクター・ジョン、リズム隊にはボブ・グラウブ、ラリー・クライン、ラッセル・カンケル、ジム・ケルトナーなどが参加。さらに、シリル・ネヴィルやボブ・シーガーもパーカッションやバッキング・ボーカルで参加しています。多数のバッキング・ボーカリストやホーンセクションも楽曲に彩りを加え、ヴァン・ダイク・パークスやデヴィッド・キャンベルによるアレンジも、アルバム全体の高い音楽性を保証しています。

『ウォーム・ユア・ハート』は、アーロン・ネヴィルのソロキャリアにおいて商業的にも芸術的にも重要な位置を占める作品です。リンダ・ロンシュタットとの強力なタッグ、多様な楽曲解釈、そして一流ミュージシャンたちのサポートが一体となり、彼の唯一無二の歌声を最大限に活かした傑作として、今なお多くの音楽ファンに愛されています。

もう一度検索