ウニコ・ヴィルヘルム・ファン・ヴァッセナール

ユニコ・ヴィルヘルム・ファン・ヴァッセナール・オブダム

ユニコ・ヴィルヘルム・ファン・ヴァッセナール・オブダム伯爵（Unico Wilhelm rijksgraaf van Wassenaer Obdam）は、1692年11月2日にネーデルラント連邦共和国（現在のオランダ）のデルデンに生まれ、1766年11月9日にデン・ハーグで没した、18世紀オランダの貴族でありアマチュアの作曲家です。彼の名を今日に伝える主要な作品は、合奏協奏曲集《コンチェルト・アルモニコ》（Concerti armonici）ですが、この作品は長い間、イタリアの作曲家ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージの作と誤って信じられてきました。

生涯

ヴァッセナールは、軍人だった父ヤコブ・ファン・ヴァッセナール・オブダムの子として、デルデンのトヴィッケル城で誕生しました。同名の祖父ヤコブも軍人として八十年戦争や英蘭戦争に従事しています。

15歳の頃からの2年間、父と共に音楽文化が栄えていたデュッセルドルフの宮廷で過ごしました。その後、1709年に帰国して当時の首都デン・ハーグに移り住み、ライデン大学で法学を修めました。彼がどのように音楽教育を受けたのかについては、詳しいことはわかっていません。

1714年に父が亡くなった後、トヴィッケルの領地を相続し、ヨーロッパ各地を旅しました。1723年には貴族の女性と結婚し、3人の子供をもうけています。彼はデン・ハーグを拠点に、共和国の外交官として重要な地位を占めました。晩年、1745年から亡くなるまでの約20年間は、夫妻でクヌーテルダイクの邸宅に居住しました。

コンチェルト・アルモニコ

ヴァッセナールは、1725年から1740年の間に6曲の《コンチェルト・アルモニコ》を作曲しました。この作品集は、イタリアのヴァイオリニスト、カルロ・リッチョッティが世に出そうとした際、当初ヴァッセナールは匿名での出版を希望しました。最終的に、作者名を伏せる条件で出版を許可し、1740年にリッチョッティによって匿名で刊行されたため、当初はリッチョッティ自身が作曲者だと考えられていました。

19世紀になると、ポーランドの作曲家フランソワ・レッセルが、このコンチェルトをペルゴレージの作品と主張しました。その理由としては、イタリア的な様式を持ち、ヴェネツィア楽派に典型的な3楽章構成ではなく、ローマ楽派のスタイルに近い4楽章構成であることなどが挙げられ、同時期のピエトロ・ロカテッリなどの作品と比較されました。

しかし、1979年にヴァッセナール伯爵の生地であるトヴィッケル城の公文書館から、《コンチェルト・アルモニコ》全6曲の自筆譜が発見されました。譜面そのものはヴァッセナール自身の筆跡ではありませんでしたが、彼自身によるフランス語の序文が添えられており、「リッチョッティ氏によって出版された拙作の楽譜」と明記されていました。その後のアルベルト・デュニングによる詳細な調査により、《コンチェルト・アルモニコ》がヴァッセナールの間違いなく真作であることが確定しました。

ちなみに、イーゴリ・ストラヴィンスキーがペルゴレージ作品を基に構成したバレエ音楽『プルチネルラ』に使われている「タランテラ」は、この《コンチェルト・アルモニコ》第2番の終楽章（Allegro moderato）を元にしています。これは当時、この曲がペルゴレージの作品と考えられていたためです。

音楽的特徴

《コンチェルト・アルモニコ》は、ヴァイオリン4部、ヴィオラ、チェロ、通奏低音という編成による協奏曲集です。合奏協奏曲（コンチェルト・グロッソ）の形式ではありますが、独奏群（コンチェルティーノ）と総奏群（リピエーノ）の明確な区別や、独立した独奏パートはほとんど見られません。

楽章構成は、多くが緩-急-緩-急の4楽章形式をとっています（第6番は3楽章ですが、その第2楽章が緩急の2つの部分に分かれています）。1740年にリッチョッティによって出版された際の番号付けと、自筆版の発見後の研究に基づく現在の番号付けには違いがあります。

その他の作品

《コンチェルト・アルモニコ》以外に、ヴァッセナールの作品として知られているものは非常に少ないです。現在確認されているのは、1713年から1715年頃に作曲されたリコーダーと通奏低音のための3曲のソナタ、そして作曲年が不明のモテット「主を褒めたたえよ (Laudate Dominum in Sanctis Ejus)」のみとなっています。

これらの限られた作品から、彼の音楽様式は同時代のイタリア音楽、特にローマ楽派の影響を受けつつも、彼独自の洗練された趣味を反映していることが伺えます。

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