ウバイド文化

ウバイド文化

ウバイド文化（紀元前6500年ごろ - 紀元前3500年ごろ）は、メソポタミアの南部に発展した先史文化であり、今日のイラク南部地域で発見された遺跡を中心に形成されました。その代表的な遺跡は、ウル遺跡から西に約6キロメートルのところに位置するテル・アル＝ウバイドです。この文化は新石器時代から銅器時代にかけての重要な文化であり、メソポタミア南部の沖積平野での最古の文化のひとつとして位置付けられています。ウバイド文化は、紀元前6500年ごろからメソポタミア全土に広がり始め、最終的には紀元前4000年ごろに始まるウルク文化にバトンを渡しました。

時系列

ウバイド文化は、一般に3つから4つの時期に分類されます。初期のウバイド1期、またはエリドゥ期（紀元前5300年 - 紀元前4700年）では、文化の広がりはまだイラク南部に限定されており、ペルシア湾の海岸線に近い地域のみが対象でした。この時期には特に北のサーマッラーと呼ばれる地域における銅器時代のサマラ文化との関連が強いです。

次のウバイド2期（紀元前4800年 - 紀元前4500年）では、集落が規模を拡大し、広範な運河網が形成され、多くの大集落が形成されました。チョガ・マミからは灌漑農業の跡も発見され、ウバイド文化の時代に発展した灌漑技術は他の地域にも広がりました。

ウバイド3期および4期（紀元前4500年 - 紀元前4000年）では、急速な都市化と文化の拡大が見られ、東にザグロス山脈、南にペルシア湾岸、北にはメソポタミア北部へと文化圏が広がりました。この文化の遺物は、シリアやアラビア半島の東部でも見つかっており、当時の交易網の広がりを示しています。アラビア半島においては、紀元前3800年ごろにこの文化は急激に衰退し、乾燥化が進行したため、以降1000年間にわたり人間活動の痕跡は発見されていません。

文化の特徴

ウバイド文化の特徴的な集落は、大規模な村落と多室構造の長方形の泥レンガ造りの家が見られます。この時期、神殿や公共施設が初めて登場し、10ヘクタール以上の大集落が小さな集落に囲まれる集権的な構造が形成されました。また、多くの土器が見つかり、その特徴は黒や褐色の幾何学模様が彩色されたもので、黄褐色や緑がかった色をしています。

農業の発展とともに定住性が進み、北はアナトリア、南はザグロス山脈に及ぶ広範な動物飼育が行われていました。社会構造の中で、階層が形成され、平等性が失われていく過程が進行しており、エリート層が顕在化しました。

発掘と研究

ウバイド文化を代表するテル・アル＝ウバイドは、比較的小規模な遺跡で、地面から約2メートルほど盛り上がっている遺丘です。1919年から大英博物館のヘンリー・ホールにより発掘が始まり、レオナード・ウーリーやセトン・ロイド、シカゴ大学の研究者たちがその後の調査を行いました。この遺跡では、ウバイド期の土器や関連する窯、さらには初期王朝時代の神殿の跡が見つかっています。神殿の周りの壁はシュルギ王によって建設され、当時の宗教や社会についての貴重な情報を提供しています。

ウバイド文化は初期の都市化を促進し、農業の進展や社会の階層化の実態を明らかにする重要な文化であり、後のシュメール文化やウルク文化への影響を与えたと考えられています。

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