ウプウアウト

ウプウアウト（Wepwawet）: エジプト神話の軍神

ウプウアウト、またはウェプワウェトは、後期エジプト神話における軍神であり、その姿はオオカミの形をしています。彼は「道を切り開く者」という意味を持ち、軍隊が進軍する際に適した道を探す偵察的な役割を果たしたとされています。信仰の中心地はアシュートと呼ばれる地域で、古代ギリシャ時代にはリコポリスと呼ばれていました。この都市名は「オオカミの都市」を意味しています。

ウプウアウトの名は、特にファラオとの関連性が強く、ファラオはオオカミの力強さにあやかり、彼をシンボルとして信仰するようになりました。ファラオはウプウアウトを狩猟に連れて行き、その影響力を強調しました。彼は「神よりも強力な鋭い矢」と称されるほど、その能力は高く評価されました。

次第に、ウプウアウトは戦争と死というテーマとも結びつくようになり、特に死者の魂を冥界へと導く役割を果たすと考えられました。オオカミとジャッカルの外見が似ているため、ウプウアウトは冥界の神アヌビスとも関連付けられるようになり、ウプウアウトがアヌビスの息子であるという信仰も広まりました。

また、ウプウアウトはしばしばジャッカルの姿でも描かれており、その結果、アヌビスとは混同されがちであり、セトの息子とされることもあります。

信仰の中心地であるアシュートでは、多くの記録が残されています。例えば、シナイ半島で見つかった碑文では、ウプウアウトが王セケムケトの勝利のために「道を切り開いた」と記されています。また、アビドスにあるセティ1世の神殿にもウプウアウトの姿が見られます。

後期古代エジプト美術では、ウプウアウトはオオカミまたはジャッカルの姿、またはジャッカルの頭部を持つ人間として描かれます。ジャッカルの姿の際も、灰色または白い毛皮で表現されることが多く、戦士のような服装でメイスや弓を持っている姿も見受けられます。

さらに、後期の神話においてはウプウアウトがウアジェトの聖域で生まれたという伝承も広まりました。ウアジェトは下エジプトの守護神であり、ウプウアウトの信仰はエジプト全体に広がることになります。これにより、ウプウアウトはエジプトの統一を象徴する存在となり、王室の儀式に組み込まれました。

ウプウアウトは後期のピラミッド文書において「ラー」とも呼ばれています。これには、地平線から上る太陽を「切り開く」者としての視点が反映されていると考えられています。また、葬送儀礼においては、死者の魂を冥界へと導く存在として重要視されています。

このようにウプウアウトは、軍事的な側面のみならず、死後の世界に関わる神であり、エジプト神話の中で重要な役割を果たしていました。

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