ウラクチ

ウラクチの生涯とその背景

ウラクチ（Ulaqchi, ？－1257年）は、ジョチ・ウルスの第4代宗主、すなわちハンである。彼の在位は1257年であり、ペルシア語などの資料では「اولاقچى Ūlāqchī」として知られている。モンゴル帝国の皇帝モンケの命により、ウラクチは前任のバトゥおよびサルタクの後を継いでジョチ・ウルスのハン位を得ることとなった。彼がサルタクの息子または末弟であるという説が存在している。

バトゥの死と後継者の選定

1256年、バトゥがオルド（後のサライ）の近くで亡くなった際、ジョチ・ウルスは新たなハンを必要としていた。バトゥの後継者として名を挙げられていたサルタクは、同年の春に開催されたクリルタイ（モンゴルの集会）に出席するため、モンゴル本土へ派遣されていた。彼が会場であるオルメクトに到着する直前に、父バトゥの訃報がもたらされ、サルタクはモンゴル本土でモンケの宮廷に留まることとなった。

モンケはこの知らせを受けた後、サルタクと彼の家族に最大の敬意を示し、サルタクにバトゥの地位を継承させることを命じた。しかし、サルタクがジョチ・ウルスに帰る途中で病に倒れ、若くして命を落とすこととなった。モンケはサルタクの家族に弔意を表し、ウラクチを新たなハンとして選出するよう命じた。

ウラクチの統治と摂政

ウラクチは幼少であったため、彼が成人するまでバトゥの第一正妃であるボラクチン・ハトゥンが摂政として彼を監督することとなったが、数カ月後にウラクチも早世してしまい、結局、バトゥの弟であるベルケがハン位を引き継ぐことになった。

ウラクチの出生に関する論争

ウラクチの出生については多くの議論がある。1260年に書かれたジュヴァイニーの『世界征服者史』では彼はサルタクの息子として描かれているが、その後の時代に編纂されたラシードゥッディーンの『集史』では、サルタクには嫡子がいなかったと記録され、ウラクチはバトゥの四男であると修正されている。このため、ウラクチの出自に関する記録は複雑で、後世の記録には錯綜が見られる。

また、1254年にサルタクのオルドを訪れたルブルクの修道士ギヨームは、サルタクに6人の妻がいたことを述べている。こういった資料により、ウラクチは育成される過程でサルタクの長子と同様の扱いを受けたのではないかと考えられている。だが、サルタクの死により、彼はボラクチン・ハトゥンの意思の下での生活を余儀なくされる。

現代の研究では、ウラクチがバトゥの末子であるとの理解が普及しているものの、彼に関する詳細な資料は非常に乏しい。『世界征服者史』と『集史』の内容は限られており、このことがウラクチの実際の人物像を掴む上での障壁となっている。従って、ウラクチに関する説はあくまでも仮説の域を出ないといえる。

結論

ウラクチの短命な統治と彼にまつわる複雑な背景は、彼の生涯を知る上での興味深い課題を提供する。モンゴル帝国の歴史において、その名は刻まれたものの、彼の実像はなおも多くの謎に包まれている。

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