ベルケ

ベルケ（Berke）

ベルケは、1257年から1266年までジョチ・ウルスの第5代ハンとして在位しました。彼はバトゥの弟であり、ジョチの三男にあたります。母はエミン部族のスルターン・ハトゥンです。史料には彼の名前が異なる表記で記載されており、漢語では別児哥、ペルシア語ではBarkāyやBarkaと表記されています。

即位以前の経歴

ベルケは、1229年春にオゴデイが即位する際のクリルタイにて、オルダ、バトゥ、シバン、タングト、トカ・テムルらと共に名を連ねました。彼は1236年にバトゥが主導する西方への遠征に参加し、キプチャク族に対する戦いで功を立てました。また、1249年にはモンケの擁立に際し、トカ・テムルと共に重要な役割を果たし、バトゥとモンケとの連絡役を務めました。

1256年にバトゥが亡くなると、モンケは彼の長男サルタクを後継者に指名しましたが、サルタクは帰路にて病没します。モンケはその弟ウラクチを後任としましたが、彼も幼少のうちに亡くなったため、ジョチ家の年長者であるベルケがハンとして即位しました。

治世と対外政策

治世に入ると、1259年にモンケが戦死し、モンゴル帝国の皇位を巡ってクビライとアリクブケの間で後継争いが勃発しました。ベルケは両者に使者を派遣し、中立を維持しようとしましたが、アリクブケ側からは警戒されていました。彼の治世では、ジョチ・ウルスがフレグの西方遠征に多くの王族を派遣し、モンケの死後の混乱においても彼は王族の回収を試みます。

1256年のある事件では、フレグの遠征に加わっていたバラカンがフレグを呪詛し、それがベルケとの関係に亀裂をもたらしました。バラカンは処刑され、彼の家族に不審死が相次ぎ、ジョチ・ウルスとフレグ間に深刻な対立が生じます。1262年、ベルケはトカルの従兄弟のノガイを指揮官として、アゼルバイジャンを通じて侵攻しました。この戦いにより、家族や軍民は逃亡し、ジョチ・ウルスとフレグ西征軍との衝突が続きました。

マムルーク朝側は、ベルケとの同盟を築こうとし、1261年には彼の指示でジョチ家の軍民が一時的に亡命する事態も発生しています。1262年冬には、マムルーク側からの使節が彼のもとを訪れるなど、外交関係を築いていく様が見られました。1265年には、アゼルバイジャン征服を目指して親征しますが、生涯の終わりをグルジアに向かう途中で迎えました。

イスラームとの関係

ベルケは、モンゴル王族の中でもいち早くイスラーム教徒として知られている人物であり、彼の生涯は多くの文献に記載されています。彼は幼少期からムスリムとしての教育を受け、またジョチ・ウルス麾下のムスリム部隊を率いる立場にありました。彼の軍団は数万人規模で、その中でも礼拝を欠かさなかったとされています。時折、イスラームの聖地を訪れることもあったとされ、カリフへの友好使節も複数回送りました。

ベルケの死後、後を継いだのはモンケ・テムルでした。彼の治世は、モンゴル帝国の複雑な権力関係を映し出すものでした。

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