ウラジミール・ツヴォルキン

ウラジミール・K・ツヴォルキン

ウラジミール・K・ツヴォルキン（Vladimir K. Zworykin、1888年7月29日 - 1982年7月29日）は、ロシア帝国出身のアメリカ人発明家、技術者です。彼は、ブラウン管と電子走査式撮像管を用いた完全電子化テレビシステムの開発に貢献し、テレビ技術の先駆者の一人として知られています。1930年代初頭からテレビの実用化に関連する様々な発明（アイコノスコープ、赤外線撮像管、電子顕微鏡など）を行い、「テレビの真の発明者」と呼ばれることもあります。

ロシア語での発音は「ヴラジーミル・ズヴォルィーキン」に近く、日本語ではツウォリキン、ズウォリキン、ズボリキンなどと表記されることがあります。ミドルネームの「K」は、出生名がコジミーチ(Козьмич)でしたが、後にコズマ(Kosma)と名乗りました。

生い立ちと教育

ツヴォルキンは、1888年にロシア帝国のムーロムで豪商の家に生まれました。父親は多忙で、比較的穏やかな環境で育ちました。サンクトペテルブルク国立工業大学では、ボリス・ロージング教授の下で学び、ロージングの研究室でテレビに関する実験助手を務めました。ロージングは1907年に世界初のテレビ関連特許（ブラウン管受像機と機械式撮像機）を出願しており、1911年には世界初のテレビ公開実験を行いました。

研究活動とアメリカへの移住

1912年に大学を卒業後、ツヴォルキンはパリでポール・ランジュバン教授の下でX線研究に従事しました。その後、第一次世界大戦中はロシア軍の通信隊に所属し、ロシアマルコーニ社で無線機器の試験を行いました。ロシア革命後、ロージングはペトログラードで専門家として働きましたが、ツヴォルキンは1918年から1919年頃にアメリカへ移住しました。

アメリカでは、ウェスティングハウス・エレクトリック社の研究所でテレビの研究を再開し、1923年に「テレビジョンシステム」という特許を出願しました。このシステムは、送信側と受信側の両方に陰極線管（ブラウン管）を使用するもので、A・A・キャンベル・スウィントンのアイデアを基にしていました。1925年末から1926年初めには、ブラウン管によるテレビ送受信の公開実験を行いましたが、ウェスティングハウス経営陣からは実用化には程遠いと判断されました。

RCAでの活躍とアイコノスコープの開発

ツヴォルキンは1929年に振動ミラーとファクシミリ送信に関する特許を出願しましたが、陰極線撮像管の開発にも力を注ぎ、同年にはキネスコープの特許を出願しました。その後、RCAの社長であるデイビッド・サーノフと出会い、RCAのカムデン研究所でテレビ開発の責任者となりました。1930年代中頃には、80本の走査線を持つキネスコープを開発しましたが、送信機構は機械式でした。そこで、ハンガリーの発明家カルマン・ティハニの特許を採用し、画像が投影された面と同じ側から走査線で光電セルを走査する方式を取り入れました。さらに、光電セルが受光した光を電荷として蓄えるという新しい原理を導入し、1931年10月に新型撮影装置「アイコノスコープ」を完成させました。

1934年末にはアイコノスコープが製品化され、1936年のベルリンオリンピックではカメラとして使用され、成功を収めました。また、ツヴォルキンは暗視装置も開発し、月や星の光を増幅して夜を昼に変えることに成功しました。

引退と晩年

ツヴォルキンは1954年に引退しましたが、その後も開発現場に関わり続けました。しかし、1974年のインタビューでは、テレビを普段全く見ないと言い、テレビ開発における最大の貢献は電源を切るスイッチを発明したことだと語りました。晩年には、テレビ放送の質に不満を抱き、孫には見せたくないと述べていたそうです。

受賞歴

1934年 - IRE モーリス・N・リーブマン記念賞
1947年 - ハワード・N・ポッツ・メダル
1951年 - IRE栄誉賞（IEEE栄誉賞）
1965年 - ファラデー・メダル
1966年 - アメリカ国家科学賞
1977年 - 全米発明家殿堂選出
1980年 - エドゥアルト・ライン財団より名誉リング授与

主な参考文献

Albert Abramson: "The History of Television 1880 to 1941", Jefferson: McFarland, 1987
Albert Abramson: "Die Geschichte des Fernsehens 1880 bis 1941", München, Fink Verlag, 2003
Albert Abramson: "Zworykin, Pioneer of Television", University of Illinois Press, Champaign, 1995
Fritz Schröter: "Handbuch der Bildtelegraphie und des Fernsehens", Berlin: Julius Springer, 1932
Fritz Schröter: "Fernsehen. Die neueste Entwicklung insbesondere der deutschen Fernsehtechnik", Berlin: Julius Springer, 1937
Walter Bruch: "Kleine geschichte des deutschen Fernsehens", Berlin: Hande & Spender, 1967
Abramson, Vladimir Zworykin: Pioneer of Television

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