ムーロム

ムーロム：歴史と文化が息づくロシアの古都

ムーロムは、ロシアのヴラジーミル州に位置する歴史的な都市です。モスクワから東へ約300km、オカ川の左岸に沿って市街が広がっています。9世紀に東スラヴ人がこの地に集落を築き、ロシア最古の都市の一つとして発展しました。交易路の中継地として栄え、数々の公国や大公国の支配を経て、現在の姿に至ります。

歴史

ムーロムは、862年のロシアの原初年代記にすでに言及されている、ロシアでも最古級の都市です。9世紀には東スラヴ人が進出し、フィン・ウゴル系のムーロマ人と共存しながら、オカ川下流に集落を築きました。10世紀頃にはヴォルガ・ブルガールからバルト海へと続く交易路の中継地として栄え、キエフ・ルーシの勢力圏に入りました。

1010年から1393年まで、ムーロムは公（クニャージ）たちの都として繁栄し、1097年にはムーロム公国が成立しました。この地は、聖ボリスとグレブ、聖コンスタンティン公など、多くの聖人を輩出しています。また、東スラヴの叙事詩に登場する英雄イリヤー・ムーロメツの出身地としても知られています。

1393年、ムーロム公国はモスクワ大公国に併合され、その後イヴァン雷帝の時代には、救世主修道院を中心に多くの聖堂が築かれました。17世紀初頭の動乱時代には、ポーランド・リトアニア共和国軍の侵攻を受けましたが、17世紀後半には復興を遂げ、修道院や聖堂だけでなく、金属工場や皮革工場、武器工場などの産業も発展しました。

1778年にはエカチェリーナ2世によって市の地位を与えられ、新古典主義建築による都市計画が進められました。1912年にはモスクワとニジニ・ノヴゴロドを結ぶ鉄道が開通し、ムーロムは再び発展の機会を得ました。独ソ戦による被害を免れたため、中世から近世にかけての古いロシアの面影を今に残しています。

経済と交通

現代のムーロムは、鉄道とオカ川・ヴォルガ川水運の中継点として重要な役割を担っています。高速道路や鉄道でモスクワをはじめとする各地と結ばれており、首都モスクワからの近さが産業の強みとなっています。

主な産業は、機械工業、無線機械、木材加工、食品加工、繊維工業などです。これらの産業は、20を超える民営企業によって支えられ、ロシア国内外に製品が輸出されています。

見どころ

ムーロムには、歴史的な聖堂や修道院などの建築物が数多く残っています。

救世主修道院: ロシア最古の修道院の一つ。イヴァン雷帝が訪れ、多くの聖堂が築かれました。
至聖三者女子修道院: 17世紀半ばの聖堂、鐘楼、カザン聖堂などが残っています。
生神女福音修道院: イヴァン雷帝の治世に創立され、1664年の聖堂には当地の公たちの遺物が納められています。
聖コスマスと聖ダミアヌス聖堂: カザン・ハン国の征服を祝って建てられた聖堂で、プスコフの職人によって建てられました。

これらの宗教施設のほか、文化宮殿、民衆文化会館、文化・歴史博物館、音楽学校、芸術学校など、文化施設も充実しています。

ムーロムへの訪問

ムーロムは、ロシアの歴史と文化に触れることができる魅力的な都市です。古い聖堂や修道院、美しい街並みを散策し、ロシアの歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。モスクワからのアクセスも良く、日帰り旅行も可能です。ぜひ一度、ムーロムを訪れてみてください。

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