ウラジーミル・シクリャローフ

ウラジーミル・シクリャローフ：マリインスキー・バレエを輝かせた才能

1985年2月9日、サンクトペテルブルクに生まれたウラジーミル・シクリャローフは、ロシアを代表するバレエダンサーとして世界的に知られていました。その華麗な経歴は、名門ワガノワ・バレエ学校での研鑽から始まります。ヴィターリー・アファナスコフに師事し、2002年にはワガノワ賞バレエ・コンクールで入賞。2003年、ワガノワ・バレエ学校卒業と同時にマリインスキー・バレエに入団しました。

マリインスキー・バレエでの活躍は目覚ましく、入団後まもなく主要な役柄を次々と演じます。2007年には『フローラの目覚め』のゼフィール役、2008年には『ル・カルナヴァル』のアルルカン役を初演。その後、ファースト・ソリスト、そして2011年にはプリンシパルに昇進しました。

類まれな才能と幅広いレパートリー

シクリャローフは、端正な容姿と卓越したテクニック、そして幅広い表現力を兼ね備えたダンサーでした。『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』といった古典バレエの王子役から、『ロミオとジュリエット』のロミオ、『ライモンダ』のジャン・ド・ブリエンヌといった主役まで、あらゆる役柄を完璧に演じきりました。さらに、『白鳥の湖』の道化や、『海賊』のアリとランケデムといった個性的な役柄もこなし、その表現力の豊かさを示しました。

彼のレパートリーは、古典バレエにとどまりません。ジョージ・バランシン振付の『ジュエルズ』や『シンフォニー・イン・C』、ハラルド・ランダー振付の『エチュード』といったネオクラシック作品も得意とし、アブストラクト・バレエの世界でも高い評価を得ていました。

世界への羽ばたきと高い評価

マリインスキー・バレエの海外公演にも多数参加し、ボリショイ劇場やアメリカン・バレエ・シアターなど、世界各地の舞台で活躍しました。2014年のアメリカン・バレエ・シアターでの『ラ・バヤデール』のソロル役デビューは、彼の国際的な地位を確固たるものとしました。ナタリア・マカロワとの共演は、彼にとって大きな経験となったようです。マカロワはシクリャローフを「本当に並はずれた女性」と評し、「唯一無二の、かけがえのない存在」と高く評価していました。

東京バレエ団へのゲスト出演（2015年）や、バイエルン国立バレエとの1年契約（2016年）など、世界中のバレエ界から熱烈な歓迎を受けていました。バイエルン国立バレエとの契約は、「マリインスキー・バレエでは踊りたい役をすべて踊ったから、新しい環境でさらにレパートリーを広げたい」という彼の意欲の表れでした。

数々の受賞歴も彼の輝かしいキャリアを物語っています。ワガノワ賞バレエ・コンクール、バレエ誌「ダンスの魂」新人賞、レオニード・マシーン舞踊芸術賞、モスクワ国際バレエコンクールシニア男性金賞など、数々の賞を受賞。2014年には国際バレエフェスティバル「ダンス・オープン」でミスター・ヴィルトゥオーゾにも選出されました。

充実した私生活と突然の別れ

私生活では、マリインスキー・バレエで活躍するダンサーのマリア・シリンキナと結婚。2人の間には、息子アレクセイと娘アレクサンドラが誕生しました。2022年には、ロシアのウクライナ侵攻に対する反対の意思をソーシャルメディアで表明するなど、社会的な発言も積極的に行っていました。

しかし、2024年11月16日、39歳の若さで急逝しました。サンクトペテルブルクのマンションから転落したことが死因と報じられましたが、亡くなる前にはアルコール依存症や薬物乱用、健康問題の噂も流れていました。

ウラジーミル・シクリャローフの死は、バレエ界に大きな衝撃を与えました。彼の類まれな才能と情熱は、これからも多くの人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。

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