ウリチ地区

ロシア沿海地方ウリチ地区：アムール川とシベリアの文化が織りなす歴史と自然

ウリチ地区は、ロシア連邦ハバロフスク地方に位置する広大な地域です。行政の中心地はボゴロツコエ村に置かれ、アムール川沿いに南北340kmに渡って広がるその景観は、変化に富んだ自然と歴史を物語っています。

歴史の軌跡：複雑な行政区分と変遷

ウリチ地区の歴史は、1933年1月17日にボリシェ＝ミハイロフスキー地区とウリチ＝ネギダル地区が合併して誕生したことに始まります。それ以前は、二つの独立した地区として存在していました。初期には下アムール管区に属していましたが、1934年以降は下アムール州、そして1938年にはハバロフスク地方の一部となりました。下アムール州の廃止（1956年）を経て、1963年にはタフチンスキー地区と合併し、ウリチ工業地区となりましたが、1965年には再びウリチ地区として再編され、現在の行政区分が確立されました。この歴史的変遷は、政治的・行政的な再編が頻繁に行われてきたことを示しています。

地理：アムール川と広大な低地、そして山脈

ウリチ地区はハバロフスク地方の中東部に位置し、その面積は39,310平方キロメートルに及びます。アムール川は地区の中央を流れ、地区の経済と生活に欠かせない存在です。地理的には、アムール川に沿って広がるウディリスコ＝キジンスカヤ低地とアムール＝アムグン低地の二つの主要な低地が特徴です。北西にはチャヤティンスキー山脈がそびえ立ち、平均標高500～600メートル、最高地点は980メートルに達します。アムール川右岸には標高700～800メートルの火山性高原が広がり、無数の小川によって刻まれています。カジ湖やキジ湖周辺には、死火山であるスシェヴァ岬やチハチェヴァ岬などの峰々が存在します。ヤイ川やムティ川といった河川は、フンミ山脈の北側を水源とし、アムール川へと流れ込みます。フンミ山脈の最高峰はシャマン山で、標高1182メートルを誇ります。

アムール川は、ニコラエフスク＝ナ＝アムーレ、コムソモリスク＝ナ＝アムーレ、アムールスク、ハバロフスクなどの都市と、地区内の多くの集落を結ぶ重要な水路です。また、漁業コルホーズの経済活動の基盤も担っています。アムール川には、アムグン川、ビチ川、ピリダ川、リムリ川、ヤイ川など、大小合わせて160もの河川が流れ込んでいます。最大の湖はウディリ湖（390平方キロメートル）で、ウフタ水路によってアムール川と繋がっています。その他、キジ湖、カジ湖など多くの湖沼が存在し、豊かな水資源に恵まれています。
東には間宮海峡があり、海運も重要な役割を果たしており、特に木材の輸出において重要な役割を担っています。デ＝カストリの港が主要な輸出拠点となっています。

気候：温暖モンスーン気候と寒暖の差

ウリチ地区の気候は温暖モンスーン気候に属します。年間平均気温は内陸部で-0.8～-2.8℃、間宮海峡沿岸では0.5～0.9℃と、地域差があります。年平均降水量は470～480mmです。冬は寒冷で乾燥し、1月の平均気温は内陸部で-25～-28℃、沿岸部でも約-18℃と、厳しい寒さが続きます。最低気温は-45～-50℃に達することもあります。積雪期間は170～180日と長期間に及びます。夏は温暖で湿潤、7月の平均気温は沿岸部で15～16℃、内陸部で17～19℃となり、最高気温は35℃に達することもあります。植物の生育期間は約154日です。

人口と民族：多様な文化の共存

2008年1月1日時点の人口は23,725人でした。都市部はありません。最大の集落は行政中心地のボゴロツコエ村で、2002年時点の人口は4,232人でした。次に大きいのはデ＝カストリ町で、同時期の人口は3,724人でした。20以上の民族が共存しており、エヴェン、エヴェンキ、ネギダール、ウデヘ、オロチ、ナナイ、ウリチなどのツングース系民族、ニヴヒ、チュクチ、コリャークなどのシベリア先住民、さらにはドルガン、ハンティなど多様な民族が暮らしています。

行政区分：農村居住区域と集落

ウリチ地区は、18の農村居住区域と合わせて32の集落から構成されています。広大な地域と多様な民族、そして豊かな自然資源を擁するウリチ地区は、ロシア極東における重要な地域の一つと言えるでしょう。アムール川という生命線と、厳しい自然環境の中で育まれた文化は、この地の大きな魅力となっています。

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