ウルトラアイ

『ウルトラアイ』は、1978年 5月8日から1986年 3月17日まで、NHK総合テレビで全293回にわたって放送された科学をテーマにした情報・教養番組です。毎週月曜日の19時30分から20時00分に放送されていました。

番組の成り立ちとコンセプト

この番組は、かつてNHK教育テレビで放送されていた中高生向け科学番組『みんなの科学』を補完する形で、小学生を主な対象とした児童科学教育番組の流れを汲む『四つの目』や『レンズはさぐる』の後継番組として企画されました。放送開始の背景には、1978年4月からの月曜日夜7時30分枠を、科学産業班と教養番組班のどちらが担当するかという競争があり、科学産業班が提出した企画が『ウルトラ・アイ』でした。パイロット版の成功がこの枠の獲得につながり、一方、教養番組班の企画は後に人気番組となる『歴史への招待』として別の時間帯で放送されました。

番組タイトルに含まれる「アイ」には、「アイデア（Idea）」「目（Eye/Vision）」「愛情（Love）」の3つの意味が込められていました。また、番組制作にあたっては、「ウルトラアイ3原則」として「ばかなことを言っても笑わない」「やってみなけりゃわからない」「みんなでやればこわくない」という、身近な疑問に対して恐れずに挑戦し、協力して解決に当たるという姿勢が重視されました。

内容とユニークな実験

番組では、NHKらしい真摯な姿勢で科学的な検証実験が行われましたが、中には当時としては斬新かつ大規模なものも見られました。例えば、燃料1リットルでどこまで走れるかの「省エネ運転術」、鶏の餌を変えて黄身の色が同心円状になることを示す「卵の大実験」、ダイヤモンドの硬さを証明するためにロードローラーで鉱物を轢く実験、ガスを使って人工的な人魂を生成する「人魂大実験」（本田宗一郎氏の協力で実現）など、多岐にわたるテーマが扱われました。その他、「すし学入門」「右きき左きき」「出会いのテクニック」「ラッシュアワー大実験」といった、生活に密着した疑問や社会現象を科学の視点から掘り下げた回もありました。

「トライヤー」山川静夫

番組の象徴ともいえる存在が、当時NHKアナウンサーだった司会の山川静夫氏です。彼は多忙な中、「理科嫌いの自分がやるのが面白い」という動機から司会を引き受けました。そして、自ら体を張って様々な実験の被験者となったことから「トライヤー」と呼ばれるようになります。これは、後の後継番組でも実験担当者の正式名称として引き継がれました。

山川氏の「トライヤー」としての活躍は伝説的です。短期間の練習でスキージャンプに挑戦したり、多数の蚊がいる蚊帳の中で蚊に刺されやすい体質を検証したり、スズメバチ駆除を試みて実際に刺されて救急搬送されたり、ボクサーのボディーブローを受けたり、マイナス30度以下の冷凍庫に耐えたりと、その実験は多岐にわたり、時には危険を伴うものでした。これらの体当たり実験は、番組の大きな魅力の一つとなりました。

他の出演者である榊原るみ氏、おおば比呂司氏、黒鉄ヒロシ氏、そしてアシスタントを務めた方々（小高千絵氏、山本百合子氏、宮本千絵氏など）も、山川氏ほどではないにせよ、時に実験に参加し「トライヤー」の役割を担うことがありました。例えば、おおば氏は「砂焼いも」の屋台を引いて実験を行ったものの、失敗に終わったエピソードなどが知られています。

その後の影響とエピソードの保存

『ウルトラアイ』とその系譜の番組は、現在放送されている『所さんの目がテン!』やかつての『ガッテン!』など、生活科学番組の草分け的な存在としてその後のテレビ番組に影響を与えました。

番組エピソードの保存に関しては、初期の放送分（特に第2回から第69回）で、再利用されることの多かった2インチVTRが使用されていたため、多くが現存していませんでした。しかし、NHK番組発掘プロジェクトによる呼びかけや、元アシスタントの小高千絵氏が個人的に録画していたベータマックスのテープ、山川静夫氏が提供したテープなどから多くのエピソードが「発掘」されました。これにより、当初失われていた多くの回が視聴可能となり、現在ではわずか1本の放送回を除いてほとんどのエピソードが確認できる状態となっています。

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