ウーファ (映画会社)

UFA：ドイツ映画黄金時代とナチスプロパガンダの影

UFA（Universum Film AG）は、ドイツ映画史にその名を刻む、歴史ある映画製作会社です。1917年、第一次世界大戦中のプロパガンダ映画制作を目的として設立されました。設立には政府の意向があり、財界の支援を受けてスタートを切りました。当初は国家プロジェクト的な色彩が強かったものの、ヴァイマル共和国時代には民営化され、ドイツ映画界を代表する存在へと成長を遂げます。

ヴァイマル時代の隆盛：革新と国際的な成功

民営化後、UFAは年間600本もの映画を制作するまでに至り、その作品群はドイツ国内のみならず、国際的にも高い評価を獲得しました。フリッツ・ラング、F・W・ムルナウ、ジョセフ・フォン・スタンバーグといった巨匠監督たちがUFA作品に携わり、革新的で実験的な作品から大衆受けする娯楽作品まで、多様なジャンルの映画が制作されました。

特に印象的なのは、フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』（1926年）でしょう。近未来的な描写と社会風刺で知られ、現在でも高い評価を受けています。また、F・W・ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』（1922年）は、表現主義的な映像美と独特の恐怖表現で、後のホラー映画に多大な影響を与えました。

UFAを彩ったスター俳優たちも忘れてはいけません。エミール・ヤニングス、ポーラ・ネグリ、マレーネ・ディートリヒなど、数多くの名優たちがUFA作品で輝きを放ちました。彼らの演技は、サイレント映画からトーキー映画への移行期においても、観客を魅了し続けました。

UFAは実験的な作品にも果敢に挑戦しました。一方では、ドイツ映画特有のジャンルである山岳映画にも力を入れており、自然の雄大さと人間のドラマを描いた作品群を生み出しました。

音楽映画においても、UFAは成功を収めています。シネオペレッタと呼ばれる、音楽とストーリーが融合した作品は、軽快な音楽と魅力的な物語で世界中に人気を博しました。

しかし、ヴァイマル共和国時代の終わりには、UFAは財政難に苦しむことになります。1927年には、実業家アルフレート・フーゲンベルクによって買収され、その経営は新たな局面を迎えることとなりました。

ナチス時代：プロパガンダと芸術の抑圧

1933年、ナチス政権が誕生すると、UFAは国家の意思に沿った映画制作を強いられることになります。アルフレート・フーゲンベルクはナチス政権の高官となり、UFAはナチスのプロパガンダ映画の主要な制作拠点となりました。

ナチス政権下では、ユダヤ人や反ナチスの人物は迫害され、多くの映画関係者が国外へ亡命しました。フリッツ・ラング、エルンスト・ルビッチ、ビリー・ワイルダー、マレーネ・ディートリヒといった巨匠たちも、この時代、UFAを離れ、アメリカ合衆国などに亡命しました。

UFAはナチス政権のために、戦争への協力を促すプロパガンダ映画を数多く制作しました。しかし、一方で、プロパガンダ映画とは別に、時代劇や冒険活劇など、芸術性の高い作品も制作されています。

第二次世界大戦末期には、ソ連軍のベルリン侵攻が迫る中、UFAは最後の作品『コルベルク』を制作、公開しました。しかし、ドイツの敗戦によって、この作品の上映は禁止されました。

戦後：再建の試みと新たな道

第二次世界大戦後、UFAはナチス政権との関与から、活動を停止せざるを得なくなりました。東ドイツにあったUFAのスタジオは、DEFAという新しい映画会社として再出発するものの、ドイツ再統一後に倒産してしまいます。西ドイツでもUFAの再建が試みられましたが、成功には至りませんでした。

現在では、UFAはベルテルスマングループ傘下の番組制作会社として存続しています。かつての栄光は失われてしまいましたが、その歴史は、ドイツ映画史、ひいては世界映画史において重要な位置を占めていることは間違いありません。UFAの作品群は、私たちに、時代を超えた芸術の力と、政治と芸術の複雑な関係について、貴重な教訓を与えてくれます。

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