エア・ジンバブエ

エア・ジンバブエ：アフリカの空を翔けた国営航空会社の軌跡

エア・ジンバブエは、ジンバブエ共和国のハラレ国際空港をハブ空港として、アフリカ南部を中心に国際線を運航していた国営航空会社です。かつてはアジアやヨーロッパへの定期便も就航させていましたが、2012年に財政難により運航を停止しました。本稿では、エア・ジンバブエの歴史、路線ネットワーク、使用機材、そしてその栄枯盛衰について詳しく解説します。

ローデシア時代からジンバブエ共和国へ

エア・ジンバブエの歴史は、1967年9月1日に中央アフリカ航空の解散に伴い設立されたエア・ローデシアに遡ります。ローデシア共和国時代にはエア・ローデシアとして運航を開始し、1979年6月にはエア・ジンバブエ・ローデシアと改称。ジンバブエ共和国の独立後、1980年4月1日に現在の名称であるエア・ジンバブエとなり、同月2日にはロンドンのガトウィック空港への路線を開設しました。この初期段階では、ボーイング707やボーイング720といった機材が使用されていました。

機材の変遷と路線網の拡大

1980年代に入ると、近距離路線を中心にボーイング737を導入。長距離路線では、ボーイング707からボーイング767への機材更新も進められました。また、1983年には貨物航空会社のアフレットエアを買収するなど、事業拡大にも積極的な姿勢を見せていました。一方、空軍から提供されたBAe146や、リースされたフォッカー50は、運用上の課題から徐々に使用が減少していきました。その後、中国製のMA60を導入するなど、新しい機材の導入にも取り組んでいましたが、ロシアのIl-96発注はキャンセルされています。

財政難と運航停止

2000年代に入ると、エア・ジンバブエは財政難に直面します。2003年には財政危機に陥ったとの報道もありました。2004年11月にはシンガポール経由の北京線を開設しましたが、2005年度の旅客数は1999年度の100万人から23万人へと大幅に減少。これはジンバブエの政情不安や治安問題、燃料不足、新しい機材不足、インフレーションなどが原因として挙げられていました。

2007年には、英国航空がハラレ国際空港の燃料供給の不安定さを理由にハラレ直行便を休止したことを受け、エア・ジンバブエはロンドン・ガトウィック便を増便する対応を取ります。しかしながら、これらの対策も功を奏せず、2012年2月24日、財政難を理由に運航を停止しました。

就航都市と使用機材

エア・ジンバブエは、ジンバブエ国内の主要都市であるハラレ、ヴィクトリアフォールズ、ブラワヨに加え、アンゴラ、コンゴ民主共和国、ザンビア、ケニア、タンザニア、マラウイ、南アフリカ共和国、モーリシャス、アラブ首長国連邦、シンガポール、中国、イギリスなど、アフリカ南部を中心に幅広い都市へ路線を展開していました。チャーター便では、日本への就航実績もありました。

運航停止時点での主要機材は、ボーイング737-200ADV、ボーイング767-200ER、西安MA60、BAe146-100などでした。2008年12月時点での機材の平均年齢は20年6ヶ月と、老朽化が懸念されていました。

まとめ

エア・ジンバブエは、ジンバブエの経済状況や政情不安といった様々な要因が絡み合い、長く厳しい経営環境の中で運航を続けてきました。その歴史は、アフリカの航空産業の変遷、そしてジンバブエの歴史そのものを反映していると言えるでしょう。 かつてアフリカの空を翔けたエア・ジンバブエの物語は、今後の航空事業経営の教訓として、我々に多くの示唆を与えてくれます。

もう一度検索