エア・フロリダ

エア・フロリダとは

エア・フロリダは、1971年から1984年まで存在したアメリカの格安航空会社です。1970年代後半の航空規制緩和を背景に、フロリダ州内のローカル航空会社から全米、さらには欧州へと路線を拡大し、急成長を遂げました。しかし、1982年の航空事故をきっかけに利用客が激減し、設立からわずか12年で倒産しました。規制緩和後に数多く誕生した新興航空会社の一つであり、その栄枯盛衰は、当時の航空業界を象徴する出来事として語られています。

設立とローカル航空会社時代

エア・フロリダは1971年、フロリダ州マイアミに設立されました。当初は、中古のロッキード L-188エレクトラ、ボーイング727、DC-9などを用いて、フロリダ州内の路線を運航する小規模な航空会社でした。地域密着型の航空会社として、地元の人々の足となっていました。

規制緩和による急成長

1978年、ジミー・カーター政権下で航空規制緩和（ディレギュレーション）が実施されると、エア・フロリダは大きな転換期を迎えます。同年12月には、初の州外路線となるマイアミ - ワシントンD.C.間の路線を開設。その後、元ブラニフ航空のエドワード・C・アッカーが経営を率いると、新規路線の開設や新機材の導入を積極的に進め、短期間で全米に路線網を拡大しました。

1980年には、初の国際線となるマイアミ - ロンドン線をDC-10で開設。同年にはアムステルダムやブリュッセルにも定期便を就航させ、さらに欧州各地へのチャーター便も運航するなど、急成長を遂げました。積極的な路線拡大と、比較的低価格な運賃設定が支持され、多くの利用客を獲得しました。

経営の行き詰まり

急速な成長を遂げたエア・フロリダでしたが、その陰りも見え始めます。アッカーは古巣ブラニフ航空の南米路線買収を試みましたが失敗。さらに、西ベルリンを拠点とするエア・ベルリンへの資本参加も狙いましたが、これも実現しませんでした。

さらに、アッカー自身がライバルであるパンアメリカン航空（パンナム）に移籍し、社長に就任するという事態が発生します。アッカー後のエア・フロリダの経営陣は短期間で交代が続き、経営が安定しませんでした。一方、パンナムに移籍したアッカーは、今度はエア・フロリダに対して値下げ攻勢を仕掛け、エア・フロリダの経営をさらに圧迫します。これらの要因が重なり、エア・フロリダの経営は急速に悪化していきました。

破局と終焉

1982年1月13日、ワシントン・ナショナル空港を離陸したフォートローダーデール行きの90便が、ポトマック川に墜落する大事故（エア・フロリダ90便墜落事故）が発生しました。この事故により、乗客乗員74人と、地上で巻き込まれた4人の計78人が死亡するという惨事となりました。

この事故は、エア・フロリダのイメージを大きく損ない、利用客が激減。定期国際線からの撤退を余儀なくされます。事故後、エア・フロリダは坂を転げ落ちるように衰退し、路線も縮小を続けました。そして1984年、ついに倒産。同年7月3日にはすべての運航を停止し、その歴史に幕を下ろしました。設立からわずか12年という短い期間での消滅でした。

所有していた機材

マクドネル・ダグラス DC-9
マクドネル・ダグラス DC-10-30
ボーイング727
ボーイング737
ロッキード L-188 エレクトラ

まとめ

エア・フロリダは、航空規制緩和という時代の波に乗り急成長を遂げましたが、その後の経営戦略の失敗と、致命的な航空事故により、短期間で消滅してしまいました。その盛衰は、航空業界における競争の厳しさ、そして安全に対する責任の重要性を物語る事例と言えるでしょう。

参考文献

賀集章『消えたエアライン』（2003年　山海堂）

関連項目

エア・フロリダ90便墜落事故

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