ロッキード L-188

ロッキード L-188 エレクトラとは

ロッキード L-188 エレクトラは、1950年代にアメリカのロッキード社が製造したターボプロップ旅客機です。愛称は「エレクトラ」。レシプロ旅客機の後継機として、ジェット旅客機が本格化するまでの繋ぎとして開発されました。しかし、ジェット旅客機の導入が予想以上に進んだため、就航時には既に陳腐化してしまい、さらに連続墜落事故が発生したことで、商業的には失敗に終わりました。

開発の背景

ロッキード社は、コンステレーションの後継機として、アメリカ初のターボプロップ旅客機を開発しました。当初は、同社のC-130輸送機をベースとした高翼式でしたが、航空会社からの要望で低翼式に変更されました。当時、ジェット旅客機は初期段階であり、運航コストが低くレシプロ機からの乗員移行が容易なターボプロップ機に期待が寄せられていました。しかし、ボーイングが開発したジェット旅客機707が優れた性能を実証したことで、エレクトラの将来は開発段階から不透明なものとなりました。

連続事故と販売低迷

エレクトラは就航後まもなく、設計上の欠陥が原因で空中分解事故が連続して発生しました。原因は、主翼のフラッター現象によるもので、大径プロペラの振動が共振を起こし、主翼を破壊したのです。この事故を受けて、エンジンの支持方法を変更し、最大巡航速度を大幅に制限することで対策が講じられましたが、事故による悪評と性能低下によって販売は大きく落ち込みました。同時期に登場したジェット旅客機には全く太刀打ちできず、わずか4年で製造が打ち切られました。

P-3 オライオンへの転換

旅客機としては失敗に終わったエレクトラでしたが、その設計は対潜哨戒機P-3 オライオンとして転用され、大きな成功を収めました。低速での巡航性能や積載量の大きさが、哨戒機としての適性を満たしたのです。P-3は、アメリカ海軍をはじめ、世界各国の軍隊に採用され、500機以上が生産されました。

その後

アメリカでは、1970年代中頃には多くの航空会社がエレクトラを旅客輸送から撤退させました。しかし、貨物機として再利用されたり、ブラジルの航空会社では、短距離路線専用機として1990年代初頭まで運用されました。現在では、ほとんどの機体が退役しましたが、一部は貨物機や消防機として使用されています。

日本での運用

日本では、航空会社によるエレクトラの採用はありませんでしたが、キャセイパシフィック航空やカンタス航空などの外国航空会社が、1950年代末から1960年代にかけて羽田空港や伊丹空港に乗り入れていました。

主要諸元

全長: 31.80m
全幅: 30.18m
全高: 10.25m
最大速度: 721km/h
乗客: 99-127名
エンジン: アリソン 501-D13 ターボプロップエンジン 4基
航続距離: 3,500km

主なユーザー

アメリカン航空
イースタン航空
ナショナル航空
キャセイパシフィック航空
KLMオランダ航空
カンタスオーストラリア航空

派生型

P-3 オライオン

まとめ

ロッキードL-188エレクトラは、旅客機としては不運な歴史をたどりましたが、その設計はP-3オライオンという対潜哨戒機として成功を収め、ロッキード社の航空機開発における重要な転換点となりました。初期のターボプロップ機に対する過剰な期待と、ジェット機時代の到来という航空業界の変化を象徴する機体と言えるでしょう。

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