エキビョウキン

エキビョウキン（疫病菌）

エキビョウキン、またの名をPhytophthora（フィトフトラ）は、原生生物界の一部に属し、植物に深刻な病害を引き起こすことで知られています。この生物は、ストラメノパイル類の卵菌綱またはクロミスタ界の卵菌門に分類され、おおよそ60種以上が存在しています。学名「Phytophthora」は、ギリシャ語の「phyto」（植物）と「phthora」（破壊者）から派生しており、その名の通り、植物に対して大きな脅威となります。

特徴と生態

エキビョウキンは、本来水生の生物です。湖や海水中で生息する種も存在しますが、土壌や植物体内でも生育可能です。菌糸を介して栄養の吸収を行い、主に無性生殖によって増殖します。無性繁殖には、遊走子のう（無性繁殖器官）とその内部に形成された遊走子が関与し、有性生殖では蔵精器と蔵卵器が重要な役割を果たします。これらの器官は、遺伝的多様性をもたらすため、特に重要です。

菌糸体と胞子

エキビョウキンの基本構造は菌糸体であり、その直径は約5-8µmで透明で多核の性質を持ちます。これらの菌糸は壁を持たないため、非常に柔軟な構造をしています。また、厚壁胞子を形成し、厳しい環境でも生存できる能力を持っています。遊走子のうは、無性繁殖のための重要な器官で、ここから放出される遊走子は長い鞭毛を持ち、周囲の環境に適応します。

植物病原菌としての影響

エキビョウキン得意の植物に対する寄生行動は深刻です。特に、ジャガイモ疫病菌であるPhytophthora infestansは、1845年からアイルランドでのジャガイモ飢饉を引き起こしたことで有名です。この菌は、植物の葉や茎に黒褐色の斑点を生じさせ、その結果、植物の成長を阻害します。感染の仕組みは、泥はねなどの物理的な接触によって行われることが多く、農作物に対して甚大な損害をもたらします。

防除方法

エキビョウキンによる被害を防ぐためには、いくつかの防除方法があります。化学的防除（農薬使用）、生物的防除（拮抗菌の利用）、耕種的防除（輪作や抵抗性品種の導入）が主要な方法です。特に、発症株の摘除が重要とされます。

主な種

エキビョウキンには多くの種があり、中でも経済的に影響を持つものを以下に紹介します。

• - Phytophthora infestans: 宿主はジャガイモ、トマト
• - P. cactorum: 野菜、果樹など多数
• - P. capsici: ナス科及びウリ科植物
• - P. cinnamomi: 幅広い宿主に寄生
• - P. sojae: ダイズなど

このように、エキビョウキンは多様な生態系に存在し、特定の植物に対して深刻な影響を与えています。農業における防除のさまざまな努力が、今後も必要となるでしょう。

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