エジプト革命 (2011年)

2011年エジプト革命：長期独裁政権の終焉と「アラブの春」

2011年、エジプトで発生した大規模な反政府デモは、約30年にわたるホスニー・ムバーラク大統領の独裁政権を崩壊させました。この革命は、「アラブの春」と呼ばれる一連の中東・北アフリカ諸国の民主化運動の一環として位置づけられ、世界に大きな衝撃を与えました。

革命の呼び声：背景と要因

ムバーラク政権下では、経済の自由化が進められ、高い経済成長率を達成しました。しかし、その一方で、若年層の失業率は高く、貧富の格差も拡大。国民の生活水準は低迷し、物価高騰も国民の不満を募らせました。長引く非常事態宣言下では、野党の弾圧も常態化し、人権状況の悪化も懸念されていました。さらに、ムバーラク大統領の6選観測や、次男への権力継承疑惑も、国民の反感を強く煽る要因となりました。

チュニジア革命の影響と火種

直前のチュニジア革命（ジャスミン革命）は、エジプトに大きな影響を与えました。長期独裁政権が民衆の力で倒れたという事実は、エジプト国民に勇気を与え、ムバーラク政権への反発をさらに激化させました。


革命の直接的な引き金となったのは、2010年6月6日に発生したアレクサンドリア出身のプログラマー、ハーリド・サイードの死亡事件です。サイードは警察の不正を告発した後、警察官によって殺害されたとされ、この事件はインターネットを通じて拡散され、国民の怒りを集めました。

革命の展開：SNSとデモ

「警察の日」である1月25日、FacebookやTwitterなどのSNSを介した呼びかけにより、大規模な反政府デモがエジプト各地で勃発しました。デモ参加者はムバーラク大統領の退陣を要求し、政府はデモ隊への弾圧を試みました。しかし、デモは拡大の一途を辿り、軍の中立表明や国際社会からの圧力も加わり、ムバーラク大統領は2月11日に大統領職を辞任しました。

デモの激化と政権崩壊

デモは当初、若者を中心に組織化されていましたが、次第に様々な層が参加する大規模な運動へと発展しました。「怒りの金曜日」と呼ばれる1月28日のデモは、その象徴的な出来事でした。軍による弾圧にも関わらず、デモは拡大し続け、政府は情報統制や夜間外出禁止令などを実施しましたが、デモの勢いを止めることはできませんでした。


2月11日、スレイマン副大統領はムバーラク大統領が大統領職を辞任し、全権をエジプト軍最高評議会に委譲したことを発表。長きにわたるムバーラク政権は、ついに崩壊しました。

革命後の混乱と移行

ムバーラク政権崩壊後、エジプトは軍による暫定統治の下に置かれましたが、民主化への道のりは平坦ではありませんでした。暫定政権に対する国民の不満は高まり、新たなデモやストライキが頻発しました。


2012年に行われた大統領選挙では、ムハンマド・ムルシーが当選し、初のイスラム系大統領となりました。しかし、ムルシー政権も国民の期待に応えることができず、2013年には軍事クーデターが発生、シーシ政権が誕生しました。

ムバーラク裁判とその後

ムバーラクに対する裁判は2011年に開始され、終身刑が言い渡されましたが、その後上級審で無罪判決となりました。

革命の要因：インターネットと世代間対立

革命の成功要因としては、インターネットと携帯電話の普及による情報拡散と、若年層と旧世代間のジェネレーションギャップが挙げられます。インターネットは、革命運動を組織化し、情報を迅速に拡散する上で重要な役割を果たしました。一方、若年層はムバーラク政権に対する強い反発を抱いていましたが、旧世代はムバーラク政権に一定の評価を与えていました。

エジプト革命の国際的な影響

エジプト革命は、アラブ世界全体に大きな影響を与え、様々な国で民主化運動が巻き起こりました。また、エジプトの経済や政治にも大きな変化をもたらしました。

結語

2011年エジプト革命は、長年続いた独裁政権を転覆させた歴史的な出来事でした。しかし、革命後もエジプトは政治的・経済的な混乱に直面し、民主化への道筋は依然として険しい道のりを歩んでいます。この革命は、民主化への希望と挫折、そして世代間の葛藤を象徴する出来事として、現代史に刻まれました。

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