エチレンシアノヒドリン

エチレンシアノヒドリン：性質、製造、用途、安全性

エチレンシアノヒドリン(3-ヒドロキシプロパンニトリル、β-シアノエタノールとも呼ばれる)は、脂肪族ニトリルであり、アルコールの性質も併せ持つ有機化合物です。かつてはアクリル酸やアクリロニトリルの製造において重要な中間体として広く用いられていましたが、現在はより効率的な方法が主流となっています。

製造方法

エチレンシアノヒドリンは、エチレンオキシドとシアン化水素を反応させることで工業的に大量生産されます。この反応は、水酸化ナトリウムを触媒として用い、100～110℃、11～25バールの条件下で行われます。反応器はコイル状のチューブ型で、水酸化ナトリウム溶液の添加によってpHを制御することで、90～98%の高収率が達成可能です。生成物は、その後、多段蒸留によって精製されます。

物理的および化学的性質

エチレンシアノヒドリンは、相対気体密度2.45（空気比）、密度1.06 g/cm³の無色の液体です。20℃での蒸気圧は0.10 hPaと低く、揮発性は低いと言えます。粘度は20℃で10 mPa・s未満と比較的低く流動性が高いです。

化学的には可燃性であり、水に非常に溶けやすい性質を持ちます。エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒にも溶解します。しかし、228℃を超える高温では分解し、猛毒のシアン化水素ガスを発生するため、取り扱いには細心の注意が必要です。水酸化アルカリ、酸化剤、酸との反応も危険を伴い、シアン化水素の発生が懸念されます。水溶液は弱酸性を示し、pHは20℃で3.0～4.5の範囲です。

用途

かつてはアクリロニトリルやアクリル酸の製造に不可欠な中間体でしたが、現在ではSohioプロセス（アンモ酸化法）に取って代わられています。Sohioプロセスはプロペンを出発原料とし、より経済的な製造法であるため、エチレンシアノヒドリンを用いる方法は主流ではありません。

現在、エチレンシアノヒドリンの主な用途は、セルロースエステルや無機塩の溶媒としての利用です。また、製薬や化粧品工業においても、一部の製品の製造に用いられるなど、ニッチな用途で利用されています。

安全性

エチレンシアノヒドリンは、皮膚や呼吸器から容易に吸収され、粘膜や皮膚への強い刺激性を示します。生殖毒性、変異原性、発がん性については、十分なデータが得られていません。爆発範囲は、下限1.1 vol%、上限12.1 vol%であり、引火点は128℃と比較的高いものの、取り扱いには可燃性にも注意が必要です。

これらの性質から、エチレンシアノヒドリンの取り扱いには、適切な保護具の着用、換気の良い場所での作業、漏洩時の迅速な対応などが不可欠です。安全データシート(SDS)を熟読し、適切な安全対策を講じる必要があります。

もう一度検索