エチレン酢酸ビニル

エチレン酢酸ビニル（EVA）の特性と用途

エチレン酢酸ビニル（EVA）は、エチレンと酢酸ビニルを共重合させた合成樹脂です。酢酸ビニルの含有量によって、その性質が大きく変化し、用途も多岐に渡ります。

EVAの3つのタイプ

一般的に、EVAは酢酸ビニルの含有量によって以下の3つのタイプに分類されます。

1. 酢酸ビニル修飾ポリエチレン（VA含有量4%まで）： 酢酸ビニルの含有量が低いEVAは、低密度ポリエチレンに似た性質を示します。熱可塑性樹脂として成形可能で、低密度ポリエチレンよりも光沢、柔らかさ、柔軟性が高い点が特徴です。毒性は低いと考えられています。

2. 熱可塑性エチレン酢酸ビニル（VA含有量4～30%）： これは最も一般的なEVAの種類で、熱可塑性エラストマーに分類されます。加硫処理は不要ですが、酢酸ビニルの含有量が高いほど、ゴムや可塑化ポリ塩化ビニルに似た性質を示します。低温特性に優れ、丈夫であるため、様々な用途に適しています。特に、約11%のVAを含むEVAはホットメルト接着剤として広く利用されています。

3. エチレン酢酸ビニルゴム（VA含有量60%以上）： 酢酸ビニルの含有量が非常に高いEVAは、ゴム状の性質を強く持ちます。

EVAの特性

EVAは、ゴムのような柔らかさと柔軟性を持ち、透明性や光沢にも優れています。低温でも強度を保ち、応力割れにも耐性があります。さらに、耐水性にも優れ、ホットメルト接着剤として適した性質を持ち、紫外線にも強いという特徴があります。独特の酢のような匂いを持つことも特徴の一つです。これらの特性から、ゴムやビニルポリマーの代替材料として、多くの電子機器にも利用されています。

EVAの用途

EVAは、その優れた特性から、非常に幅広い分野で利用されています。代表的な用途としては以下が挙げられます。

接着剤： ホットメルト接着剤、特にグルースティックなどに多く使用されています。蝋や樹脂を添加することで、さらに性能を高めることができます。食品用ラップフィルムの粘着性向上剤としても用いられます。
スポーツ用品： スキーブーツ、自転車のサドル、ホッケーのパッド、ボクシンググローブ、ウェイクボードブーツ、釣り竿など、衝撃吸収材として様々なスポーツ用品に使用されています。スニーカーやランニングシューズのミッドソール、クロックスなどにも使用され、ナイキの「Phylon」としても知られています。また、漁業用の浮きにも利用されています。
医療分野： ドラッグデリバリーシステムなどの医用生体工学分野にも応用されています。EVAは生体内で分解されにくく、不活性であるため、薬剤の徐放剤としての使用が可能です。
太陽電池： 結晶シリコン系太陽電池の製造にも使用されています。
日用品： スリッパ、サンダルなどの素材として使用されるほか、コルクの代替材としても用いられています。軽量で製造が容易、無臭、光沢があり、安価であることから、天然ゴムに比べて多くの利点があります。
塗料： 屋内水性塗料のコーティング配合剤としても使用されています。

EVAの加水分解

EVAを加水分解すると、エチレンビニルアルコールの共重合体が得られます。

まとめ

EVAは、その柔軟性、耐久性、耐水性、加工性の高さなどから、接着剤、スポーツ用品、医療機器、日用品など、非常に幅広い分野で活用されている重要な素材です。今後ますますその用途は広がっていくと予想されます。

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